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いえ、相手が弱すぎるだけです

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パーティーの次の日、来る意味がないのにユリアス様が我が家にいらした。

「魔術院からあのアイテムの捜索を依頼された。出来れば内密に」

ユリアスが渋い顔でマリアーナを見ている。
魔術院の方々も無茶を言いますね。

「それでしたらロイド先生から呼び出しを受けてますので一緒に学園に行きますか?」

官僚でも、理由なく学園には入れないから、と思って提案すれば、意外にもすぐに頷いた。



休みに入った学園に着いて指定の場所に向かうと、ロイドの薄茶色の髪がキョロキョロしているせいかいつもより乱れ、東の庭にあるガゼボで何かを探しているのが見えた。

「ロイド先生?何をお探しですか?」

マリアーナが声を掛けると、水色の目がやっとこちらを見た。

「ガーネット子爵令嬢。いや、昨日の事で、もしかしたらここら辺にあのアイテムがあるかも、と思ってね」

流石魔法学の先生です。あの状況を見ただけでなんの魔法が使われたか理解したようです。
先生は、レベルは高いですが魔力の全体量が少ないのが残念です。

「流石です。でも、何故此処に?」
「デブリ男爵令嬢が此処でダスト伯爵令息達と良く居たから、もしかしたらと思ったんだよ」

確かに。良く此処でいちゃいちゃしてましたっけ。

「私も探しますね」
「いや、さっきから探してるけど、見つからないから此処では無いのかもしれない」

ロイド先生は、諦めたようにポケットに手を突っ込み首を横に振った。

「そうですか。で、今回の呼び出しの用件は?」
「学園内でガーネット子爵令嬢、君を守れなかった事を謝罪しようと思って」

水色の目が申し訳なさそうにこちらを見る。
ロイド先生、真面目ですね。
でも、本気で謝罪するならうちに来てください。呼び出しなんてちょっと誠意を疑います。

「謝罪をしていただくような事、何もありませんでした。ロイド先生はデブリ男爵令嬢達と距離を取っておりましたし」

違法アイテムの影響により私を罵倒していたのは主に他の攻略対象者達であって、ロイド先生は遠巻きに見ていただけですから。

しかも、ヒロイン達からの精神干渉魔法は使われた形跡がありませんでした。
じゃあ、何故私は学園の生徒達から距離を置かれていたんでしょう?ちょっと疑問です。
困っていませんでしたけどね。

「それにしても、此処はちょっと殺風景ですね。花も少ないですし」

本当に殺風景です。ガゼボとちょっとした花壇。テーブルは1つで椅子も5脚しかない。
テーブルに触れば、表面が少しざらついて、飾りの彫刻も消え掛かっている。

「此処なら人目に付きませんからね」

ロイド先生の投げやりな言い方を軽く笑いながら聞き流し、ユリアス様に目を向けた。

「ジルコン公爵令息、わざわざ付いて来てくださり感謝します。先生のご用事は謝罪だけでした」
「安堵しました。言い掛かりをかけられるかと心配しましたから」

ユリアス様の言葉にロイド先生が複雑な顔をしていたが、同行した理由を否定できないだろう。

「謝罪は本当に必要ありません。ダスト伯爵令息とは卒業パーティー前に婚約を解消しておりましたし、直接被害は受けておりませんので」

私がテーブルから手を離し、真っ直ぐロイド先生を見ると、先生は寂しそうに笑った。

「ガーネット子爵令嬢は強いですね」

いえ、ダスト伯爵令息が弱すぎただけです、とは言えないので曖昧な笑みで誤魔化した。
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