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ロマンス小説の読み過ぎです
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「マリ、今日学園に行ったら中庭でこの魔法陣を発動しなさい」
翌朝、お父様から見事な魔法陣が書かれた紙を渡された。
「これは、カイン様の魔法陣ですね」
「流石だな。シルヴィー母さんが作った魔法陣を覚えていてくださったから」
幾重にも魔法陣が重ねられた、見たことの無い複雑な魔法陣を魅入っていると、お父様が出所を教えてくれた。
お祖母様は、難題に直面するといくつもの新しい魔法陣を生み出してきた希代の天才、王国の至宝とも呼ばれていた。
私もお祖母様に憧れて、よく一緒に魔法の訓練をしていたから、その凄さは良く知っている。
残念ながら、私には新しい魔法陣を作り出す才能は有りませんでしたけどね。
そのお祖母様と行動を共にしていたカイン様は、長く王立魔術院の長官を勤めていた偉大な魔術師で、今は引退されてギルドマスターであった奥様のユーノ様とのんびり暮らしてる筈なのに、引っ張り出されたんだ。
隠居先の田舎でのんびりしていらっしゃるルーファス様やジェフリー様まで引っ張り出されて来たら申し訳ないです。
「これは、発動するのにかなりの魔力が無いと難しいのでは無いですか?」
「マリなら問題ないよ」
お父様の笑顔が眩しいです。
私は中庭で魔法陣を手のひらに乗せ、魔力を高めた。
お祖母様が作り、カイン様が磨き上げた魔法陣。
どんな風に作用するか分からないが、きっと多くの人達のためになる物だろう。
心を落ち着ける為、息を大きく吸い赤紫に染まる魔法陣を見ながら
「発動」
と、声を出した。
赤紫の光が波紋が広がる様に、学園内を走って行く。
これで何かが変わるとは思っていなかったけど、なんだろう、視線が痛い。
ぼっちとは言わないが、何となく下位の貴族の人達から避けられていた筈なのに、今日に限ってやたら目が合う。
「防御魔法が低かった人達ね」
中庭の近くで待っていて下さった、唯一仲がいいアマリア様がチラッと人垣を見て、フンと鼻息を荒くした。
アマリア様はパール公爵家の次女で、綺麗な黒真珠みたいな髪と瞳をした方で、ローランド王太子殿下とソフィア王太子妃殿下の長男、アレクセイ様の婚約者。
身分が違うのに、とても親しくしてくださる方。
「貴族だけでなく、魔力を持つ者は精神干渉魔法に対する防御魔法を磨くのが決まりなのに、何を考えているのかしらね」
アマリア様の言葉は、冷たく聞こえるけどそれは魔力を持つ者の義務。
とは言え、防御魔法は地味で、いつ役に立つかわからないから、おざなりにするよね。
「それよりやっと婚約破棄したんですって。お父様が教えて下さったの」
それ、昨日の話なんですが……。
パール公爵家にまで筒抜けなんですね。
「破棄ではなく解消です。本来なら格下の私からは出来ない事なのですが」
でもお祖父様辺りならやるな。
もしかしたら、ウィリアム陛下も喜んで協力するだろうな。
うちって怖い。
「あら?ウィリアム陛下が激怒しながらダスト家に書簡を送ったって話よ」
ウィリアム陛下……。
火力強過ぎです。
今頃、ダスト家は大騒ぎだろうな。もう関係ないですが。
さてと、卒業パーティーのパートナー、どうしましょう?
お兄様にお願いしようかな?
「それでマリ、パーティーのパートナーはどうしますの?」
やたら此方の事を伺う視線を黙殺し、教室に向かう途中、アマリア様がウキウキしながら聞いてくる。
「ルシルお兄様にお願いしようかと思ってます」
1番被害と迷惑が少ないでしょうから。
「ルシル様ねぇ。折角マリアーナは美人なのだから、もっとこう、ロマンスを感じられる方にお願いしなさいな」
アマリア様、ロマンス小説の読みすぎです。
翌朝、お父様から見事な魔法陣が書かれた紙を渡された。
「これは、カイン様の魔法陣ですね」
「流石だな。シルヴィー母さんが作った魔法陣を覚えていてくださったから」
幾重にも魔法陣が重ねられた、見たことの無い複雑な魔法陣を魅入っていると、お父様が出所を教えてくれた。
お祖母様は、難題に直面するといくつもの新しい魔法陣を生み出してきた希代の天才、王国の至宝とも呼ばれていた。
私もお祖母様に憧れて、よく一緒に魔法の訓練をしていたから、その凄さは良く知っている。
残念ながら、私には新しい魔法陣を作り出す才能は有りませんでしたけどね。
そのお祖母様と行動を共にしていたカイン様は、長く王立魔術院の長官を勤めていた偉大な魔術師で、今は引退されてギルドマスターであった奥様のユーノ様とのんびり暮らしてる筈なのに、引っ張り出されたんだ。
隠居先の田舎でのんびりしていらっしゃるルーファス様やジェフリー様まで引っ張り出されて来たら申し訳ないです。
「これは、発動するのにかなりの魔力が無いと難しいのでは無いですか?」
「マリなら問題ないよ」
お父様の笑顔が眩しいです。
私は中庭で魔法陣を手のひらに乗せ、魔力を高めた。
お祖母様が作り、カイン様が磨き上げた魔法陣。
どんな風に作用するか分からないが、きっと多くの人達のためになる物だろう。
心を落ち着ける為、息を大きく吸い赤紫に染まる魔法陣を見ながら
「発動」
と、声を出した。
赤紫の光が波紋が広がる様に、学園内を走って行く。
これで何かが変わるとは思っていなかったけど、なんだろう、視線が痛い。
ぼっちとは言わないが、何となく下位の貴族の人達から避けられていた筈なのに、今日に限ってやたら目が合う。
「防御魔法が低かった人達ね」
中庭の近くで待っていて下さった、唯一仲がいいアマリア様がチラッと人垣を見て、フンと鼻息を荒くした。
アマリア様はパール公爵家の次女で、綺麗な黒真珠みたいな髪と瞳をした方で、ローランド王太子殿下とソフィア王太子妃殿下の長男、アレクセイ様の婚約者。
身分が違うのに、とても親しくしてくださる方。
「貴族だけでなく、魔力を持つ者は精神干渉魔法に対する防御魔法を磨くのが決まりなのに、何を考えているのかしらね」
アマリア様の言葉は、冷たく聞こえるけどそれは魔力を持つ者の義務。
とは言え、防御魔法は地味で、いつ役に立つかわからないから、おざなりにするよね。
「それよりやっと婚約破棄したんですって。お父様が教えて下さったの」
それ、昨日の話なんですが……。
パール公爵家にまで筒抜けなんですね。
「破棄ではなく解消です。本来なら格下の私からは出来ない事なのですが」
でもお祖父様辺りならやるな。
もしかしたら、ウィリアム陛下も喜んで協力するだろうな。
うちって怖い。
「あら?ウィリアム陛下が激怒しながらダスト家に書簡を送ったって話よ」
ウィリアム陛下……。
火力強過ぎです。
今頃、ダスト家は大騒ぎだろうな。もう関係ないですが。
さてと、卒業パーティーのパートナー、どうしましょう?
お兄様にお願いしようかな?
「それでマリ、パーティーのパートナーはどうしますの?」
やたら此方の事を伺う視線を黙殺し、教室に向かう途中、アマリア様がウキウキしながら聞いてくる。
「ルシルお兄様にお願いしようかと思ってます」
1番被害と迷惑が少ないでしょうから。
「ルシル様ねぇ。折角マリアーナは美人なのだから、もっとこう、ロマンスを感じられる方にお願いしなさいな」
アマリア様、ロマンス小説の読みすぎです。
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