[完結]悪役令嬢に転生しました。冤罪からの断罪エンド?喜んで

紅月

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大人達は密かに笑う

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「君達が優秀なのは理解したが、これは王家を揺るがす事だ。事態が片付く迄、他言無用を命じる」

報告書を見ていたウィンチェスト公爵とペトリオス侯爵が顔を上げ、騎士団に新しく創設された部署の隊員達を見る。

5名の隊員達の姿は何処にでも居そうな、平凡な姿だ。
ただ、仮面の様な無表情と無駄のない動作が平民とは違う。

隊員達は静かに敬礼し、音も立てずウィンチェスト公爵の執務室から退出していった。

「……相当腹を立てている様だな」
「あの子を冤罪で断罪しようとしているのですから、容赦しないでしょう」

隊員を見ていたウィンチェスト公爵の前にある机には今回の調査報告書が積んである。
どれもこれも、呆れるほど綿密で広範囲に調べ尽くされた物ばかり。

「我が家に年頃の息子が居ないことが悔やまれるよ」

ウィンチェスト公爵が苦笑いをすると、ペトリオス侯爵が柔らかく笑う。

「居たとしても陛下はお許しにならないでしょう。軍が力を持ち過ぎる事になりますから」

軍に権力が集中することは、王家に取っては諸刃の剣になる。

「そうだった。だが、彼女の素晴らしさは手放すのが惜しいほどだ」

ウィンチェスト公爵の手放しの賛辞に、ペトリオス侯爵は誇らしい気持ちになる。

「あの子が言ってました。自分はすごい人間では無い。本当に素晴らしいのは、小娘である自分の思い付きにさえ耳を傾けてくれる人達だ、と」

謙遜も謙った訳でも無い。アレキサンドラは本気でそう思っている。

「確かにそうだが、その事に気がつける者は少ない」

多くの人は、自分の意見が採用され、周りが感謝すれば自分だけがすごい、と驕り高ぶるものだ。

「我が子ながら、あの聡明さには驚かされてばかりです」
「では、学園の新年会が楽しみだ」

既に準備は完了している。
些細な事案の背後に隠されていた巨悪が白日の下に晒される。

大人達は密かに笑みを交わした。
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