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自惚れ屋の初恋

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「ふん。帝王学ならまだしも、歴史学など学ぶ必要などない」

アーロンはいつもの様に、受けたくない授業をサボる為、カフェに向かって中庭を護衛も付けず1人で歩いていた。

ふと、図書館の方を見ると窓辺に、いつもは居ない銀髪の美少女を見つけ、アーロンは足を止めた。

柔らかな光を受け、緩くまとめられている銀髪が輝く。
教科書に視線を落とす儚げな横顔につい見惚れていると、彼女がゆっくりと顔を上げほぅとため息をもらす。

あまりの美しさに声も出ない。

「あの者をカフェに誘うか」

窓辺に向かおうとした時、イーサンの姿が目の端に映る。
双子のせいか、女性の好みも同じイーサンに彼女を知られるのは面白くない。

アーロンは窓辺から視線を外し、イーサンの方に歩き出した。

「やっぱり兄さんもサボってたんだ」

建物の中でイーサンがにやにや笑う。

「歴史学なんて学ぶ必要などない。カフェで時間を潰すぞ」
「そうだと思った」

イーサンはスタスタとカフェに向かって歩くのを見てから、アーロンはもう一度図書館の方を見た。

窓辺の彼女はまた教科書に視線を落とし、こちらを見ていない。

「ふん。私が誘わなくとも、いずれあっちから擦り寄ってくるだろう」

王子である自分の周りには、いつも女が纏わりついてきている。
目さえ合えば、彼女から自分に擦り寄って来ると思い、にやけそうな口元を引き締めた。
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