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[アリッサの奮闘記]根回しは既に終わり、本番へ
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「これがあの日のあらましです」
クレストが冷めてしまった紅茶に手を伸ばし、渇いた喉を潤した。
1時間では終わらなかったが、エリンジウムは満足そうに頷いた。
「なるほど。ファルシオン先生とアリッサ嬢の間には強い絆がある様だ」
エリンジウムが納得した様に頷くと、クレストは口元を少しだけ上げる。
「お陰でエリカは騎士団で便利に使われそうになったり、私も飼い殺しになりそうでしたが、アリッサと大魔法使いのお陰で平穏です」
聞き捨てならない言葉にエリンジウムがピクッと眉を上げたが、クレストは飄々とした顔で
「ご心配要りません。既にエリカは騎士団の上の近衛騎士団に配属が決まり、エリカが抜けた穴を埋める為、今頃、騎士団は右往左往しています」
と、言って笑った。
隊長を務めていたエリカの穴は、思っているよりも大きいだろう。
「クレスト卿は?」
「今は閑職に回りましたので、気が楽です」
エリンジウムの目がモルセラを見れば、モルセラはゆっくり頷いた。
「クレスト卿。今、私達は学園での仕事があるが、冬のパーティーが終わればある程度自由になる」
エリンジウムの言葉に、クレストは唇を少し上げた。
「アリッサから聞いております。大魔法使いから依頼もありますので、閑職に居るのです」
どうやらアリッサ達は既に手を回している様だ。
「驚かされてばかりだ」
「あの子は何処まで先を見ているか、兄であっても理解しきれません」
これから積み上げるであろうクレストの功績を横取りしようとしていた者達にとっては、クレストが閑職に回るのは想定外だったろう。
「この休みが終われば騒がしくなると思うが、冬には私の秘書官になって貰うからそのつもりで」
エリンジウム達は、アリッサが幻覚魔法の事を話した時の顔を思い出した。
今を諦めない、とパライバトルマリンの様な美しい瞳の奥の決意の強さ。
剣も魔法も強いのに、今と言う時間を諦め掛けていた彼女が見せた決意。
「過去ではなく未来を」
今を諦めないと決めたアリッサは、きっと無敵だ。
「で、こけしになった元伯爵達はどうなった?」
話が重くなったので、気分を変える為気になっている事をクレストに聞けば
「さぁ?北の鉱山で、薪にでもなってるかもしれませんね」
と、冷ややかに言う。
夏が終われば、自分達の未来を守る戦いが始まる。
アリッサが何度も諦めた未来。
だが、諦めを捨てた無敵の彼女ならきっと新しい未来を掴み取るだろう。
「冬が楽しみだ」
エリンジウムがすっかり暗くなった外を見て、呟いた。
終わり
此処までお付き合い頂き、本当にありがとうございます。
次はどの話にしようかただいま検討しています。
また別の話でお会いできたら嬉しいです。
クレストが冷めてしまった紅茶に手を伸ばし、渇いた喉を潤した。
1時間では終わらなかったが、エリンジウムは満足そうに頷いた。
「なるほど。ファルシオン先生とアリッサ嬢の間には強い絆がある様だ」
エリンジウムが納得した様に頷くと、クレストは口元を少しだけ上げる。
「お陰でエリカは騎士団で便利に使われそうになったり、私も飼い殺しになりそうでしたが、アリッサと大魔法使いのお陰で平穏です」
聞き捨てならない言葉にエリンジウムがピクッと眉を上げたが、クレストは飄々とした顔で
「ご心配要りません。既にエリカは騎士団の上の近衛騎士団に配属が決まり、エリカが抜けた穴を埋める為、今頃、騎士団は右往左往しています」
と、言って笑った。
隊長を務めていたエリカの穴は、思っているよりも大きいだろう。
「クレスト卿は?」
「今は閑職に回りましたので、気が楽です」
エリンジウムの目がモルセラを見れば、モルセラはゆっくり頷いた。
「クレスト卿。今、私達は学園での仕事があるが、冬のパーティーが終わればある程度自由になる」
エリンジウムの言葉に、クレストは唇を少し上げた。
「アリッサから聞いております。大魔法使いから依頼もありますので、閑職に居るのです」
どうやらアリッサ達は既に手を回している様だ。
「驚かされてばかりだ」
「あの子は何処まで先を見ているか、兄であっても理解しきれません」
これから積み上げるであろうクレストの功績を横取りしようとしていた者達にとっては、クレストが閑職に回るのは想定外だったろう。
「この休みが終われば騒がしくなると思うが、冬には私の秘書官になって貰うからそのつもりで」
エリンジウム達は、アリッサが幻覚魔法の事を話した時の顔を思い出した。
今を諦めない、とパライバトルマリンの様な美しい瞳の奥の決意の強さ。
剣も魔法も強いのに、今と言う時間を諦め掛けていた彼女が見せた決意。
「過去ではなく未来を」
今を諦めないと決めたアリッサは、きっと無敵だ。
「で、こけしになった元伯爵達はどうなった?」
話が重くなったので、気分を変える為気になっている事をクレストに聞けば
「さぁ?北の鉱山で、薪にでもなってるかもしれませんね」
と、冷ややかに言う。
夏が終われば、自分達の未来を守る戦いが始まる。
アリッサが何度も諦めた未来。
だが、諦めを捨てた無敵の彼女ならきっと新しい未来を掴み取るだろう。
「冬が楽しみだ」
エリンジウムがすっかり暗くなった外を見て、呟いた。
終わり
此処までお付き合い頂き、本当にありがとうございます。
次はどの話にしようかただいま検討しています。
また別の話でお会いできたら嬉しいです。
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