34 / 41
切れた鎖と解放された翼
しおりを挟む
「1つ聞きたいのですが、私の事要りますか?」
「はあ、アンタみたいなモブなんていらないわよ」
吐き捨てる、と言うより噛み付きそうな顔でアリッサに、いらない、とはっきり言った。
シャラン、と小さい音にアリッサはハッとした。
アリッサ達が、アリッサの左手首を見れば、しがみつく様に巻き付いていた鎖が切れており、手を振れば磨き上げられている床に落ちた。
「どうやら、アリッサは解放された様だな」
「そうみたいですね」
腕に絡まっていた細い鎖が徐々に錆びて、ポロポロと崩れて行く。
さっきデージーが
「アンタなんかいらないわよ」
と、叫んでから切れた鎖が床に落ちた事で更に崩れていく。
錆びて崩れる鎖が、もうアリッサが利用される事のない、完全な自由を取り戻した証となった。
はじめはアリッサは、自分はデージーが時間を巻き戻す際の命綱として使われている、と思っていた。
だが、それだけならば時間を遡る時、アリッサが記憶を継続する必要は無い。
疑問に思ったファルシオンが魔法使いの塔の魔法使い達を動員してトラップやデージーの背後を調べ尽くせば、隣国のきな臭い噂も無く、この世界自体がデージーの思惑に振り回されているのを自浄しようとしていることが判明した。
アリッサは有能である為、その自浄作用に巻き込まれ、デージーにその事を利用されたらしい。
「ですが、疑問があります」
「ん?」
「時間を巻き戻す為に時間を飛ぶ時は同時に、だと思うのですが何故私が10歳迄遡ったのに、この人とは時間差があるのは何故でしょうか?」
この謎がどうしても解けなかったアリッサは正直にファルシオンに尋ねた。
「アリッサはドラゴンの様に、飛ぶ為の助走を必要としない。しかも、出発地点は違っても到着地点は変わらない。故にアレがどれ程必死になっても飛ぶ為の時間が開くんだ」
意味が解りません、と言いたげなアリッサの頭に手を乗せファルシオンが笑った。
「アリッサは10歳のあの日に戻る事を決めていただろ」
「はい。人生をやり直すなら、まだ選択肢が決まっていないあの日が一番良い、と思いましたので」
10歳のアリッサは、まだ人生の選択を迫られていない。だから巻き戻されたくは無いが、また過去に戻るならあの日にしよう、と決めていた。
「複雑だが目印の無い時間迷路で迷わず過去の一点に戻るには強い魔力が必要だが、凡人でも目印があれば戻れる」
ファルシオンも一度時間迷路を遡ったことがある為、ファルシオンの説明にアリッサは納得しているが、エリンジウム達はまだ理解が追いついていない様だ。
「アリッサは自力で同じ地点に戻っているが、この馬鹿はアリッサから伸びる鎖を頼りに、時間迷路を抜けようとしていたが、コイツは魔力が無いうえ、迷路の中の時間は外の時間と違い、恐ろしく速い」
「しかも鎖は元の時間に戻ると消えるから、アイツはいつも戻りたい時間じゃ無く、ギリギリの時間になるんですね」
ランタナがズバッと言う。
「そのまま迷路で永遠に迷ってれば、良かったのに」
「あんな所で迷子になるなんて絶対嫌よ」
マロウは心底呆れた様な顔で絶望感に染まるデージーを見た。
「アリッサの時間が進めば鎖が緩み、撓むから必死に手繰り寄せながら進んでいたんだろうが、な」
無駄な事を、とファルシオンが冷笑を浮かべながら呟いた。
「煩いわね。あんな孤児院や男爵家の貧乏生活に誰が戻りたいなんて思うもんか」
「違いますね。戻らなかったんじゃなく、魔力が無いから戻れなかったんでしょ」
ランタナがズバッと真実を言った。
「私の呪いも解けましたし、学園の幻覚魔法も解けましたので、貴女の味方は1人も居ません」
「幻覚魔法……。なにそれ」
デージーはミモザの話をまったく聞いていなかったようだ。
「気が付きませんでしたか?トラップが失敗したのに、殿下達の好感度が上がってなんてありえないのに」
キョトンとした顔でアリッサがデージーを見ると、デージーの顔色がどんどん悪くなって行く。
「まさか……全部……嘘」
「はい。まるっきり疑わないので、逆に心配になりました」
アリッサが死刑宣告の様な言葉を笑顔で言い切った。
「はあ、アンタみたいなモブなんていらないわよ」
吐き捨てる、と言うより噛み付きそうな顔でアリッサに、いらない、とはっきり言った。
シャラン、と小さい音にアリッサはハッとした。
アリッサ達が、アリッサの左手首を見れば、しがみつく様に巻き付いていた鎖が切れており、手を振れば磨き上げられている床に落ちた。
「どうやら、アリッサは解放された様だな」
「そうみたいですね」
腕に絡まっていた細い鎖が徐々に錆びて、ポロポロと崩れて行く。
さっきデージーが
「アンタなんかいらないわよ」
と、叫んでから切れた鎖が床に落ちた事で更に崩れていく。
錆びて崩れる鎖が、もうアリッサが利用される事のない、完全な自由を取り戻した証となった。
はじめはアリッサは、自分はデージーが時間を巻き戻す際の命綱として使われている、と思っていた。
だが、それだけならば時間を遡る時、アリッサが記憶を継続する必要は無い。
疑問に思ったファルシオンが魔法使いの塔の魔法使い達を動員してトラップやデージーの背後を調べ尽くせば、隣国のきな臭い噂も無く、この世界自体がデージーの思惑に振り回されているのを自浄しようとしていることが判明した。
アリッサは有能である為、その自浄作用に巻き込まれ、デージーにその事を利用されたらしい。
「ですが、疑問があります」
「ん?」
「時間を巻き戻す為に時間を飛ぶ時は同時に、だと思うのですが何故私が10歳迄遡ったのに、この人とは時間差があるのは何故でしょうか?」
この謎がどうしても解けなかったアリッサは正直にファルシオンに尋ねた。
「アリッサはドラゴンの様に、飛ぶ為の助走を必要としない。しかも、出発地点は違っても到着地点は変わらない。故にアレがどれ程必死になっても飛ぶ為の時間が開くんだ」
意味が解りません、と言いたげなアリッサの頭に手を乗せファルシオンが笑った。
「アリッサは10歳のあの日に戻る事を決めていただろ」
「はい。人生をやり直すなら、まだ選択肢が決まっていないあの日が一番良い、と思いましたので」
10歳のアリッサは、まだ人生の選択を迫られていない。だから巻き戻されたくは無いが、また過去に戻るならあの日にしよう、と決めていた。
「複雑だが目印の無い時間迷路で迷わず過去の一点に戻るには強い魔力が必要だが、凡人でも目印があれば戻れる」
ファルシオンも一度時間迷路を遡ったことがある為、ファルシオンの説明にアリッサは納得しているが、エリンジウム達はまだ理解が追いついていない様だ。
「アリッサは自力で同じ地点に戻っているが、この馬鹿はアリッサから伸びる鎖を頼りに、時間迷路を抜けようとしていたが、コイツは魔力が無いうえ、迷路の中の時間は外の時間と違い、恐ろしく速い」
「しかも鎖は元の時間に戻ると消えるから、アイツはいつも戻りたい時間じゃ無く、ギリギリの時間になるんですね」
ランタナがズバッと言う。
「そのまま迷路で永遠に迷ってれば、良かったのに」
「あんな所で迷子になるなんて絶対嫌よ」
マロウは心底呆れた様な顔で絶望感に染まるデージーを見た。
「アリッサの時間が進めば鎖が緩み、撓むから必死に手繰り寄せながら進んでいたんだろうが、な」
無駄な事を、とファルシオンが冷笑を浮かべながら呟いた。
「煩いわね。あんな孤児院や男爵家の貧乏生活に誰が戻りたいなんて思うもんか」
「違いますね。戻らなかったんじゃなく、魔力が無いから戻れなかったんでしょ」
ランタナがズバッと真実を言った。
「私の呪いも解けましたし、学園の幻覚魔法も解けましたので、貴女の味方は1人も居ません」
「幻覚魔法……。なにそれ」
デージーはミモザの話をまったく聞いていなかったようだ。
「気が付きませんでしたか?トラップが失敗したのに、殿下達の好感度が上がってなんてありえないのに」
キョトンとした顔でアリッサがデージーを見ると、デージーの顔色がどんどん悪くなって行く。
「まさか……全部……嘘」
「はい。まるっきり疑わないので、逆に心配になりました」
アリッサが死刑宣告の様な言葉を笑顔で言い切った。
148
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説
国外追放を受けた聖女ですが、戻ってくるよう懇願されるけどイケメンの国王陛下に愛されてるので拒否します!!
真時ぴえこ
恋愛
「ルーミア、そなたとの婚約は破棄する!出ていけっ今すぐにだ!」
皇太子アレン殿下はそうおっしゃられました。
ならよいでしょう、聖女を捨てるというなら「どうなっても」知りませんからね??
国外追放を受けた聖女の私、ルーミアはイケメンでちょっとツンデレな国王陛下に愛されちゃう・・・♡
88回の前世で婚約破棄され続けて男性不信になった令嬢〜今世は絶対に婚約しないと誓ったが、なぜか周囲から溺愛されてしまう
冬月光輝
恋愛
ハウルメルク公爵家の令嬢、クリスティーナには88回分の人生の記憶がある。
前世の88回は全てが男に婚約破棄され、近しい人間に婚約者を掠め取られ、悲惨な最期を遂げていた。
彼女は88回の人生は全て自分磨きに費やしていた。美容から、勉学に運動、果てには剣術や魔術までを最高レベルにまで極めたりした。
それは全て無駄に終わり、クリスは悟った。
“男は必ず裏切る”それなら、いっそ絶対に婚約しないほうが幸せだと。
89回目の人生を婚約しないように努力した彼女は、前世の88回分の経験値が覚醒し、無駄にハイスペックになっていたおかげで、今更モテ期が到来して、周囲から溺愛されるのであった。しかし、男に懲りたクリスはただひたすら迷惑な顔をしていた。
処刑されるくらいなら、平民になって自由に生きる!~最強聖女は女神として降臨する~
あおくん
恋愛
公爵令嬢のエレンは病弱体質だった。
ある日熱で魘されていたエレンは夢を見る。婚約破棄を突き付けられる夢を。
よくわからない罪で断罪されるくらいなら、平民になり冒険者になって自由を掴み取って見せるわ!と行動するお話です。
ゆるゆる設定で、ぬるっと進みます。
異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?
転生聖女のなりそこないは、全てを諦めのんびり生きていくことにした。
迎木尚
恋愛
「聖女にはどうせなれないんだし、私はのんびり暮らすわね〜」そう言う私に妹も従者も王子も、残念そうな顔をしている。でも私は前の人生で、自分は聖女になれないってことを知ってしまった。
どんなに努力しても最後には父親に殺されてしまう。だから私は無駄な努力をやめて、好きな人たちとただ平和にのんびり暮らすことを目標に生きることにしたのだ。
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
美形王子様が私を離してくれません!?虐げられた伯爵令嬢が前世の知識を使ってみんなを幸せにしようとしたら、溺愛の沼に嵌りました
葵 遥菜
恋愛
道端で急に前世を思い出した私はアイリーン・グレン。
前世は両親を亡くして児童養護施設で育った。だから、今世はたとえ伯爵家の本邸から距離のある「離れ」に住んでいても、両親が揃っていて、綺麗なお姉様もいてとっても幸せ!
だけど……そのぬりかべ、もとい厚化粧はなんですか? せっかくの美貌が台無しです。前世美容部員の名にかけて、そのぬりかべ、破壊させていただきます!
「女の子たちが幸せに笑ってくれるのが私の一番の幸せなの!」
ーーすると、家族が円満になっちゃった!? 美形王子様が迫ってきた!?
私はただ、この世界のすべての女性を幸せにしたかっただけなのにーー!
※約六万字で完結するので、長編というより中編です。
※他サイトにも投稿しています。
義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます
富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。
5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。
15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。
初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。
よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる