17 / 41
ダンジョンはやはり危険な場所です
しおりを挟む
ダンジョンは転移魔法を使えばあっという間に着く場所で、今回は鬱蒼とした森の中にある比較的難易度の低い場所だ。
だが、森の中にはウサギの様な長い耳を持つカーバンクルなど危険な魔獣もおり安心は出来ない。
「カーバンクルが居ますね」
エニシダが警戒しながら息を吐いた。
「B級の、レベルは高い魔獣ですから、こちらから攻撃をしなければ大丈夫です」
額に赤い宝石を持つカーバンクルは、見た目はウサギか猫の様な愛らしい姿だが、攻撃力や魔力はあの猿型の魔獣よりも強い。
所謂、外見詐欺の魔獣だ。
「ダンジョンに入ります。お2人は剣を抜いて警戒してください」
アリッサはカーバンクルからダンジョンの入り口に目を向けて、魔法使いのローブのフードを被り直した。
アンサシアと言う木は、ダンジョンの比較的浅い階層に生えるので、手順さえ間違わなければ短時間で採取できる。
そう、出来るのだが、アンサシアは獰猛な肉食植物で、その根の採取方法がかなり特殊な為、冒険者達が採取を嫌がるので希少素材になっている。
「モルセラ様、アンサシアの採取はちょっと特殊なので、驚かないで下さい」
エニシダが申し訳なさそうに言うのが気になり、どの様に?と聞こうとした時、先を歩いているアリッサに木の根が襲い掛かるのが見えた。
「アリッサ嬢!」
最悪の事を想像し、走り出そうとするモルセラをエニシダが止めた。
「これがアンサシアの根の採取方法なんです」
エニシダ曰く、アンサシアの根を採取するにはアンサシア自身に獲物捕獲の為に根を出させる必要があり、剣を持たない囮が必要なのだ。
「し、しかし……」
「アリッサさんは完璧な防御膜を使用してますので、アンサシアの根が貫通する事はありません」
オリハルコンの錬成に必要な根は捕獲根では無く、人間の胃袋に相当する消化袋が付いている本体に近いもの。
それを踏まえてアリッサが囮として前を歩いている、と説明されモルセラは戸惑った。
エニシダが嘘や嫌がらせの為にアリッサを使っているのでは無い、と解ってもその手を振り解きそうになってしまう。
「私は剣は使えますが、アリッサさんほど強い魔力が無いので囮にはなれません」
研究の為とはいえ、何度もアリッサを危険に晒している事への罪悪感に泣きそうになっていた。
「エニシダ様、消化袋が出ます」
攻撃を受けているのにアリッサの普段と変わりない、涼しげな声にエニシダはモルセラに頭を下げ、剣を抜いて走り出した。
半透明な消化袋をブヨブヨと揺らしながら本体の根が地中から現れた。
「今回は袋ごと切り落としてください」
「はい」
防御膜に阻まれアリッサを串刺しに出来ない事に苛立っているのかアンサシアは防御膜ごと消化袋に飲み込もうと袋の口を広げている。
「捕獲根は俺が切るから、エニシダ嬢は本体を狙え」
「ありがとうございます」
出遅れたのにエニシダよりも一歩早くアリッサのもとに着いたモルセラが暴れる捕獲根を切り落とし始め、エニシダが渾身の一撃で消化袋ごと本体の根を切った。
アンサシアの根が見事に切断され、消化袋がボヨン、と跳ね中身が辺りに流れ出した。
と、同時に攻撃根は地中に潜ってアンサシアは大人しくなった。
「消化液は空気に触れると無毒になりますから触っても大丈夫です」
エニシダは手際良く消化袋を切断した根を抱え、引き摺っていく。
「俺が持つ」
モルセラがエニシダが引き摺っていた根を持ち上げるとスタスタと出口へと歩き始めた。
「アンサシア、伝言は?」
モルセラ達の姿が遠くなった時、アリッサが自分に襲い掛かったアンサシアに声を掛けた。
『……仇は打った、と』
「分かりました。完全回復は出来ませんが……」
アリッサの魔力で切断された消化袋が付いた根が再構築されて行く。
『面白い子供だ。ワシにまで温情をかけるのか?』
「自分から消化袋を見せたから、頼み事があるのでは?と思いました」
アンサシアが葉を揺らし、アリッサの言葉を肯定する。
「では失礼します」
アンサシアにもう一度、簡易的な回復魔法を掛け、地面に落ちた赤い宝石を拾った。
だが、森の中にはウサギの様な長い耳を持つカーバンクルなど危険な魔獣もおり安心は出来ない。
「カーバンクルが居ますね」
エニシダが警戒しながら息を吐いた。
「B級の、レベルは高い魔獣ですから、こちらから攻撃をしなければ大丈夫です」
額に赤い宝石を持つカーバンクルは、見た目はウサギか猫の様な愛らしい姿だが、攻撃力や魔力はあの猿型の魔獣よりも強い。
所謂、外見詐欺の魔獣だ。
「ダンジョンに入ります。お2人は剣を抜いて警戒してください」
アリッサはカーバンクルからダンジョンの入り口に目を向けて、魔法使いのローブのフードを被り直した。
アンサシアと言う木は、ダンジョンの比較的浅い階層に生えるので、手順さえ間違わなければ短時間で採取できる。
そう、出来るのだが、アンサシアは獰猛な肉食植物で、その根の採取方法がかなり特殊な為、冒険者達が採取を嫌がるので希少素材になっている。
「モルセラ様、アンサシアの採取はちょっと特殊なので、驚かないで下さい」
エニシダが申し訳なさそうに言うのが気になり、どの様に?と聞こうとした時、先を歩いているアリッサに木の根が襲い掛かるのが見えた。
「アリッサ嬢!」
最悪の事を想像し、走り出そうとするモルセラをエニシダが止めた。
「これがアンサシアの根の採取方法なんです」
エニシダ曰く、アンサシアの根を採取するにはアンサシア自身に獲物捕獲の為に根を出させる必要があり、剣を持たない囮が必要なのだ。
「し、しかし……」
「アリッサさんは完璧な防御膜を使用してますので、アンサシアの根が貫通する事はありません」
オリハルコンの錬成に必要な根は捕獲根では無く、人間の胃袋に相当する消化袋が付いている本体に近いもの。
それを踏まえてアリッサが囮として前を歩いている、と説明されモルセラは戸惑った。
エニシダが嘘や嫌がらせの為にアリッサを使っているのでは無い、と解ってもその手を振り解きそうになってしまう。
「私は剣は使えますが、アリッサさんほど強い魔力が無いので囮にはなれません」
研究の為とはいえ、何度もアリッサを危険に晒している事への罪悪感に泣きそうになっていた。
「エニシダ様、消化袋が出ます」
攻撃を受けているのにアリッサの普段と変わりない、涼しげな声にエニシダはモルセラに頭を下げ、剣を抜いて走り出した。
半透明な消化袋をブヨブヨと揺らしながら本体の根が地中から現れた。
「今回は袋ごと切り落としてください」
「はい」
防御膜に阻まれアリッサを串刺しに出来ない事に苛立っているのかアンサシアは防御膜ごと消化袋に飲み込もうと袋の口を広げている。
「捕獲根は俺が切るから、エニシダ嬢は本体を狙え」
「ありがとうございます」
出遅れたのにエニシダよりも一歩早くアリッサのもとに着いたモルセラが暴れる捕獲根を切り落とし始め、エニシダが渾身の一撃で消化袋ごと本体の根を切った。
アンサシアの根が見事に切断され、消化袋がボヨン、と跳ね中身が辺りに流れ出した。
と、同時に攻撃根は地中に潜ってアンサシアは大人しくなった。
「消化液は空気に触れると無毒になりますから触っても大丈夫です」
エニシダは手際良く消化袋を切断した根を抱え、引き摺っていく。
「俺が持つ」
モルセラがエニシダが引き摺っていた根を持ち上げるとスタスタと出口へと歩き始めた。
「アンサシア、伝言は?」
モルセラ達の姿が遠くなった時、アリッサが自分に襲い掛かったアンサシアに声を掛けた。
『……仇は打った、と』
「分かりました。完全回復は出来ませんが……」
アリッサの魔力で切断された消化袋が付いた根が再構築されて行く。
『面白い子供だ。ワシにまで温情をかけるのか?』
「自分から消化袋を見せたから、頼み事があるのでは?と思いました」
アンサシアが葉を揺らし、アリッサの言葉を肯定する。
「では失礼します」
アンサシアにもう一度、簡易的な回復魔法を掛け、地面に落ちた赤い宝石を拾った。
188
お気に入りに追加
243
あなたにおすすめの小説

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

魔力を持たずに生まれてきた私が帝国一の魔法使いと婚約することになりました
ふうか
恋愛
レティシアは魔力を持つことが当たり前の世界でただ一人、魔力を持たずに生まれてきた公爵令嬢である。
そのために、家族からは冷遇されて育った彼女は10歳のデビュタントで一人の少年と出会った。その少年の名はイサイアス。皇弟の息子で、四大公爵の一つアルハイザー公爵家の嫡男である。そしてイサイアスは周囲に影響を与えてしまうほど多くの魔力を持つ少年だった。
イサイアスとの出会いが少しづつレティシアの運命を変え始める。
これは魔力がないせいで冷遇されて来た少女が幸せを掴むための物語である。
※1章完結※
追記 2020.09.30
2章結婚編を加筆修正しながら更新していきます。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる