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イジメ?ではない様です

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ドラゴンと会ってから数日後、モルセラとマロウはサンキライの言葉にモヤモヤしていた。

「アリッサに惚れるなよ」

その後に告げられた呪いの事でその言葉が額面通りでは無いことくらい解っている。
解っているからモヤモヤしているが、何をしたらいいのかわからなくて、溜息が漏れそうになった時、アリッサが2人の女子生徒に慌てながら何かを話している姿が見えた。

「虐めですか?」
「分かりません。ですが、アリッサ嬢は困っている様ですね」

モルセラが眉を顰め、女子生徒達を見ると、マロウがアリッサ達の方へ歩み寄って行った。



「……ですから、受け取れません」
「駄目よ。折れた剣を直そうとしたらこうなったんだもの」
「そうよ。アリッサさんには実験に使う素材をいつも分けてもらっているんだから、これくらい受け取って」

聞こえなかった会話が聞こえ、モルセラ達が首を傾げた。

「何を揉めているんですか?」
「ハルキシア侯爵令息」

突然マロウ達が現れ、驚いたアリッサが2人の女子生徒達の存在を忘れ、振り返った。
振り返ったアリッサが手に持っている短剣にモルセラの目が行った。

「オリハルコンの短剣」

騎士のモルセラならそれが何かなど言われなくても分かる。
神の黄金とも呼ばれる希少な金属。

「えっ?オリハルコン。おい、それって」
「先に言いますけど、王家の宝物庫から持って来たものではありません。私達が作った物ですわ」

マロウが慌ててアリッサを見たが、横から否定する言葉が出て、マロウはアリッサの横に立っている女子生徒達を見た。

「ハルキシア侯爵令息。こちらの方はエニシダ・ネムタス伯爵令嬢とランタナ・メリス子爵令嬢です」

エニシダ、と呼ばれた女子生徒は深緑の髪にカナリアイエローの瞳をした背の高い美少女で、ランタナと呼ばれた方は明るいオレンジ色の髪に紫の瞳をした小柄な少女で、愛らしい顔を膨らませマロウを睨んでいる。

「今、作った、と言っていた様だが」
「はい。私達が作りました。作り方は古い魔法大全集に載っております」

しっかりと答えたのはランタナの方で、エニシダはハラハラしながらランタナとマロウを交互に見ている。

「それは昔から不可能な錬成、と言われているものだ」
「不可能だから試さない?それは知識への冒涜です」

可愛い見た目に反し性格はかなりきついのだろう。だが、知識への探究心は賞賛できる。

「証明として、僕が見ている所で再現して貰えるかな?」
「勿論、喜んで」

売り言葉に買い言葉、の2人をエニシダはオロオロしながら見ていたが、突然背後からファルシオンが話に割り込んで来た。

「メリス子爵令嬢、そのアリッサの短剣を貸してくれ」
「ファルシオン先生」
「これで厄介な物が壊せる」

と、何の説明もせずファルシオンは短剣を受け取り、あっという間に姿を消した。

「何の話です?」

あまりの素早さに対応しきれなかったランタナが目を丸くしていた。

「すみません。師匠が奇妙な魔力溜まりがどうの、と言ってたのでその事だと思います」

アリッサもファルシオンの行動を全て把握している訳ではないので不確定な言葉しか出ない。

「それより、オリハルコンの錬成はどうなりました?」

マロウが有耶無耶にするのか、と言いたげな顔でランタナを挑発する。

「アンサシアの根が手に入りましたら、すぐにでもお見せしますわ」

そう強気で言いながら、すまなそうにアリッサを見た。
希少素材の入手先はアリッサの腕に掛かっている。

「……ダンジョンに行って来ます」

自分が行かなければ、全く魔獣討伐訓練をしていないランタナが行くと言いそうだ、とアリッサは理解していた。

「私も参ります。アリッサさんばかりに頼っていては駄目ですもの」

エニシダが同行を申し出た。

「ネムタス伯爵令嬢」

マロウでは無く、モルセラが焦った顔でエニシダの名を呼んだ。

「ご心配ありがとうございます。ですが、これでも武門の人間。ダンジョンには慣れております」

気の弱そうな態度だが、エニシダはか弱い令嬢ではない。
騎士科では上位の成績を修めている、将来有望の女性騎士である。

「エニシダ様。同行して頂くのは有難いですが、決して無理はしないでください」
「勿論です。自分の力量は理解してます」

アリッサの忠告に、エニシダは素直に頷いた。
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