9 / 41
ドラゴンに会いたい、と言う強者
しおりを挟む
新しい環境にソワソワしていた新入生達も落ち着き、魔獣討伐の訓練授業が始まった。
騎士科の生徒達は初めての授業に緊張している様だが、凄腕の冒険者サンキライの名前は知っているのだろう。
彼を見る生徒達の目は、どこかキラキラしていた。
訓練授業初日は基本的な事の確認だけで終わったが、授業の後サンキライはエリンジウム達と話していた時、1人の女子生徒に話しかけられた。
「初めまして、サンキライ先生。3年のミモザ・ノースマルドです」
綺麗なレモンイエローの髪に若草色の瞳をした、騎士科の生徒では無い女子生徒をサンキライ達は戸惑いながら見た。
「あ、ああ。何か用ですか?」
「サンキライ先生。わたくし、ドラゴンの事を知りたくて……」
「ドラゴン?それなら俺よりアリッサの方が詳しいぞ」
頬を赤くしながらサンキライに声を掛けた理由を告げるミモザをサンキライは驚きながらも笑ってアリッサの名前を口にした。
「アリッサ嬢が?」
エリンジウムが驚くと、サンキライはアリッサが密猟者からドラゴンの子供を助けた時の事を話した。
驚く彼らの横をアリッサ達が書類を抱え通り過ぎようとした。
「アリッサ様、お願いがありますの」
「ノースマルド公爵令嬢……」
過去6回、学園に通っていても一度も話した事のない、高位貴族の令嬢が目の前でちょっとモジモジしながらアリッサに話しかけて来た。
「わたくし、子供の頃見たドラゴンが好きで、どうしてももう一度この目で見たいんです」
魔獣の中でも飛び抜けて強いドラゴンは確かに美しい。
だが、美しいが恐ろしい存在でもある。
「正直言って高位貴族の令嬢が魔獣最強のドラゴンを見たい、と言われても賛成は出来ません」
これは魔法使いとしての言葉では無く、冒険者としての言葉だ。
何もなければいいが、もし瘴気で凶暴化していたら、冒険者や魔法使いでも命掛けの戦いになる。
そんな場所に戦いに慣れていない者を連れて行くのは自殺行為に等しい。
「覚悟はできております。わたくしが足手纏いになるのでしたら囮でもなんでも構いません」
儚げな容姿とは裏腹な気丈な台詞に周りの者達が驚いた。
「ならサナスの丘に連れて行ったらどうだ?あそこなら運が良ければドラゴンに会える」
ファルシオンの提案で、比較的危険度の低いダンジョン近くの丘に訓練の下見を兼ねて行く事が決まった。
騎士科の生徒達は初めての授業に緊張している様だが、凄腕の冒険者サンキライの名前は知っているのだろう。
彼を見る生徒達の目は、どこかキラキラしていた。
訓練授業初日は基本的な事の確認だけで終わったが、授業の後サンキライはエリンジウム達と話していた時、1人の女子生徒に話しかけられた。
「初めまして、サンキライ先生。3年のミモザ・ノースマルドです」
綺麗なレモンイエローの髪に若草色の瞳をした、騎士科の生徒では無い女子生徒をサンキライ達は戸惑いながら見た。
「あ、ああ。何か用ですか?」
「サンキライ先生。わたくし、ドラゴンの事を知りたくて……」
「ドラゴン?それなら俺よりアリッサの方が詳しいぞ」
頬を赤くしながらサンキライに声を掛けた理由を告げるミモザをサンキライは驚きながらも笑ってアリッサの名前を口にした。
「アリッサ嬢が?」
エリンジウムが驚くと、サンキライはアリッサが密猟者からドラゴンの子供を助けた時の事を話した。
驚く彼らの横をアリッサ達が書類を抱え通り過ぎようとした。
「アリッサ様、お願いがありますの」
「ノースマルド公爵令嬢……」
過去6回、学園に通っていても一度も話した事のない、高位貴族の令嬢が目の前でちょっとモジモジしながらアリッサに話しかけて来た。
「わたくし、子供の頃見たドラゴンが好きで、どうしてももう一度この目で見たいんです」
魔獣の中でも飛び抜けて強いドラゴンは確かに美しい。
だが、美しいが恐ろしい存在でもある。
「正直言って高位貴族の令嬢が魔獣最強のドラゴンを見たい、と言われても賛成は出来ません」
これは魔法使いとしての言葉では無く、冒険者としての言葉だ。
何もなければいいが、もし瘴気で凶暴化していたら、冒険者や魔法使いでも命掛けの戦いになる。
そんな場所に戦いに慣れていない者を連れて行くのは自殺行為に等しい。
「覚悟はできております。わたくしが足手纏いになるのでしたら囮でもなんでも構いません」
儚げな容姿とは裏腹な気丈な台詞に周りの者達が驚いた。
「ならサナスの丘に連れて行ったらどうだ?あそこなら運が良ければドラゴンに会える」
ファルシオンの提案で、比較的危険度の低いダンジョン近くの丘に訓練の下見を兼ねて行く事が決まった。
204
お気に入りに追加
243
あなたにおすすめの小説

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

魔力を持たずに生まれてきた私が帝国一の魔法使いと婚約することになりました
ふうか
恋愛
レティシアは魔力を持つことが当たり前の世界でただ一人、魔力を持たずに生まれてきた公爵令嬢である。
そのために、家族からは冷遇されて育った彼女は10歳のデビュタントで一人の少年と出会った。その少年の名はイサイアス。皇弟の息子で、四大公爵の一つアルハイザー公爵家の嫡男である。そしてイサイアスは周囲に影響を与えてしまうほど多くの魔力を持つ少年だった。
イサイアスとの出会いが少しづつレティシアの運命を変え始める。
これは魔力がないせいで冷遇されて来た少女が幸せを掴むための物語である。
※1章完結※
追記 2020.09.30
2章結婚編を加筆修正しながら更新していきます。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。
ふまさ
恋愛
伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。
けれど。
「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」
他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します
佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚
不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。
私はきっとまた、二十歳を越えられないーー
一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。
二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。
三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――?
*ムーンライトノベルズにも掲載

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜
妄想屋さん
ファンタジー
最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。
彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、
「このパーティを抜けたい」
と、申し出る。
しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。
なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。

成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる