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賑やかなギルドのとんでもない話
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「へぇ、学園で教師……。アリッサ、頑張れよ」
冒険者ギルドで来月から学園で教師として働くから依頼は受けられない、と受付の者に話をしているとアリッサ達と顔見知りの冒険者サンキライがアリッサの頭をグリグリ撫でる。
濃い茶色の髪に紺色の瞳をした、野生的な彼は冒険者ギルドの実力者だ。
「私では無く、師匠がです」
「ファルシオンが真面目に教師をするとは思えないね」
ケラケラ笑うサンキライの言い分に反論が出ない。
前のファルシオンはとっても怠惰だったが、今のファルシオンは、ある意味教師に向く人間では無い。
ため息を吐きながらまだ笑っているサンキライを見た。
4つ上のサンキライとの付き合いも長く、12歳で魔法使いの塔に所属すると同時にギルドで冒険者登録した頃からの付き合いだ。
4回目と5回目では顔見知りだったし、何度も同じ依頼で仕事もした事がある為、ある程度性格は知っていたが、今回も豪胆だが仲間思いの気持ちの良い青年だ。
「ま、俺も騎士科で、魔獣討伐訓練の為に何回か学園に行くからな」
これだけの美貌に実力者のサンキライなら学園の女子生徒にモテるだろう、とぼんやり考えていたが、妙な違和感を感じて繁々とサンキライの顔を見た。
「えっ?」
「ん?どうした。やっと俺の魅力に気が付いたのか?」
「サンキライさんがハンサムなのは知ってます。ですが、騎士科の魔獣討伐訓練って何?」
過去の自分が学園に通っていた時には無かったはずだ、とアリッサが首を傾げると
「ちょっと前までは無かった訓練だが、魔法使いの塔の依頼で騎士科の学生達が受ける事になったんだってよ」
サンキライも不思議そうな顔をした。
「いちいちBだのCだの下級魔獣が出たくらいで魔法使いの塔に依頼をされると仕事に支障が出るんで、組み込んだ」
ファルシオンが手続きが終わって受付から戻ると、あっさりと説明をした。
「師匠。魔獣って言っても強さはまちまちですよ。S級やSS級の魔獣が出たらどうするんですか!学園生達が討伐できる訳無いでしょ」
頭を抱えたくなったアリッサがファルシオンに反論すると、ファルシオンはチラッとサンキライに目を向けた。
「その為にもギルドの実力者を頼んだ。ギルドの連中なら、やばい魔獣の気配に対応出来るからな」
もっともな意見だが、それでも魔獣を見た事さえない学生達にはかなり酷な授業になるだろう。
「おう。それにアリッサの時みたいに気の抜けた討伐は滅多に無いから、警戒は怠らねぇ」
気の抜けた討伐が何を示しているのか分からずアリッサは首を傾げるが、ちょっと前にあったかなり大掛かりの討伐で、アリッサはSクラスの魔猪を手懐けて、同じSクラスのワイバーンに説教をし、あっさり撤退させたのだ。
しかも、別の日にはSSクラスのドラゴンの子供を密猟者から助けた為、親のドラゴンには感謝され、子供のドラゴンには懐かれてしまった。
本来、魔獣は討伐対象であって、意思疎通をするなんてあり得ない事なのだが、何度もループして当たり前になっていたアリッサは理解していなかった。
「強ければ強い程知能も高いが、アリッサみたいに説得なんざ、普通出来ねーんだけどな」
「でも、説得してくれたお陰で、あの状況でも私達、無傷だったじゃない」
暴走した魔猪一頭でも、ギルドの実力者が数人がかりで無いと討伐出来ないのに、アリッサのお陰でワイバーンまで撤退させる事が出来たのだから、ギルドの者達はアリッサに感謝している。
「俺、ワイバーンに説教した奴初めて見たよ」
「大丈夫。みんな初めてだから」
ギルドの詰所に居た冒険者達がワイワイ話しているが、当のアリッサはまだファルシオンに文句を言って、周りの話に気が付いていなかった。
冒険者ギルドで来月から学園で教師として働くから依頼は受けられない、と受付の者に話をしているとアリッサ達と顔見知りの冒険者サンキライがアリッサの頭をグリグリ撫でる。
濃い茶色の髪に紺色の瞳をした、野生的な彼は冒険者ギルドの実力者だ。
「私では無く、師匠がです」
「ファルシオンが真面目に教師をするとは思えないね」
ケラケラ笑うサンキライの言い分に反論が出ない。
前のファルシオンはとっても怠惰だったが、今のファルシオンは、ある意味教師に向く人間では無い。
ため息を吐きながらまだ笑っているサンキライを見た。
4つ上のサンキライとの付き合いも長く、12歳で魔法使いの塔に所属すると同時にギルドで冒険者登録した頃からの付き合いだ。
4回目と5回目では顔見知りだったし、何度も同じ依頼で仕事もした事がある為、ある程度性格は知っていたが、今回も豪胆だが仲間思いの気持ちの良い青年だ。
「ま、俺も騎士科で、魔獣討伐訓練の為に何回か学園に行くからな」
これだけの美貌に実力者のサンキライなら学園の女子生徒にモテるだろう、とぼんやり考えていたが、妙な違和感を感じて繁々とサンキライの顔を見た。
「えっ?」
「ん?どうした。やっと俺の魅力に気が付いたのか?」
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過去の自分が学園に通っていた時には無かったはずだ、とアリッサが首を傾げると
「ちょっと前までは無かった訓練だが、魔法使いの塔の依頼で騎士科の学生達が受ける事になったんだってよ」
サンキライも不思議そうな顔をした。
「いちいちBだのCだの下級魔獣が出たくらいで魔法使いの塔に依頼をされると仕事に支障が出るんで、組み込んだ」
ファルシオンが手続きが終わって受付から戻ると、あっさりと説明をした。
「師匠。魔獣って言っても強さはまちまちですよ。S級やSS級の魔獣が出たらどうするんですか!学園生達が討伐できる訳無いでしょ」
頭を抱えたくなったアリッサがファルシオンに反論すると、ファルシオンはチラッとサンキライに目を向けた。
「その為にもギルドの実力者を頼んだ。ギルドの連中なら、やばい魔獣の気配に対応出来るからな」
もっともな意見だが、それでも魔獣を見た事さえない学生達にはかなり酷な授業になるだろう。
「おう。それにアリッサの時みたいに気の抜けた討伐は滅多に無いから、警戒は怠らねぇ」
気の抜けた討伐が何を示しているのか分からずアリッサは首を傾げるが、ちょっと前にあったかなり大掛かりの討伐で、アリッサはSクラスの魔猪を手懐けて、同じSクラスのワイバーンに説教をし、あっさり撤退させたのだ。
しかも、別の日にはSSクラスのドラゴンの子供を密猟者から助けた為、親のドラゴンには感謝され、子供のドラゴンには懐かれてしまった。
本来、魔獣は討伐対象であって、意思疎通をするなんてあり得ない事なのだが、何度もループして当たり前になっていたアリッサは理解していなかった。
「強ければ強い程知能も高いが、アリッサみたいに説得なんざ、普通出来ねーんだけどな」
「でも、説得してくれたお陰で、あの状況でも私達、無傷だったじゃない」
暴走した魔猪一頭でも、ギルドの実力者が数人がかりで無いと討伐出来ないのに、アリッサのお陰でワイバーンまで撤退させる事が出来たのだから、ギルドの者達はアリッサに感謝している。
「俺、ワイバーンに説教した奴初めて見たよ」
「大丈夫。みんな初めてだから」
ギルドの詰所に居た冒険者達がワイワイ話しているが、当のアリッサはまだファルシオンに文句を言って、周りの話に気が付いていなかった。
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