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初恋は静かに息絶える。

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話し合いが終わり、自室に戻るとレイモンドからの呼び出しの手紙を渡された。

「どうなさいましたか?」

レミが心配そうにシルヴィーを見る。

「明日、授業が終わったら家に戻れ、だそうよ」

要件は解らないが、楽しい話では無さそうだ、とシルヴィーは視線を落とす。

ダドリーは、今日は本宅に戻って居るから、朝から顔を見ていない。
泣きそうになるが、ジルコン公爵家の事もレイモンドの耳に入れて置きたいので、戻る事を決めた。

授業は珍しく午後まであり、シルヴィーがロードライト家に戻ったのは、夕方だった。

「お帰りなさいませ、お嬢様」

出迎えたのは、新しく入った執事で、ロマンスグレーのいかにも執事、と言った感じの男だった。

「お父様は?」
「書斎です」
「そう、では取り継いで。遅くなければ寮に戻るから」
「畏まりました」

シルヴィーは制服のまま、レイモンドの書斎に向かった。

「シルヴィーです」
「入りなさい」

父親の許可を得て、シルヴィーは書斎の扉を開ける。
柔らかな微笑みを浮かべるレイモンドを、シルヴィーは無表情で見詰めた。

「ご用件は?」
「シルヴィー、私が君の婚約者となるべき者へ出した条件を覚えているかな?」

シルヴィーは頷き、父親がラリマー宰相達に提示した条件を口にした。

「魔術学院では3年間トップ5をキープし、剣の腕前は私同様にイーリスを扱える様になる事。そして、魔力は最低80以上に成る、でしたね」

今でも、あり得ないほど厳しい条件だ、と思う。

「そちらを覚えているとはね」

困った様な顔のレイモンドをシルヴィーは不思議そうに見詰めた。

「私は、シルヴィーの結婚相手は私が認め、シルヴィーが望む者でなければ認めない。と決めている」

レイモンドの言葉にシルヴィーの心が震える。
彼との未来を望んでもいいのだろうか、と。

「ただ、やはり平民とではそれも難しい」

解ってはいたが、やはり駄目なのか、と視線が下がってしまう。

「シルヴィーに聞くが、誰と結婚したい?」

難しい、と言われても望みを口にしたいが、望みを口にすれば、彼にとっては命令にも等しい。

「お父様にお任せ……」

します、と言わなければ。頭では解っていても、心が付いてこない。
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