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閑話 リリーの回想。
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リリーの回想
若い3人の騎士を見ながらあたしは、自分が初めてシルヴィー様に会った時を思い出した。
12歳で騎士見習いとして騎士団の門を叩いた。
今は平民だけど、元騎士であった父のお陰で、かなり剣が使えたあたしは、随分生意気な子供だった。
見習いの中でも素質がある、と褒められていたから地味な基礎訓練をサボリ周りの大人に対しても生意気で、嫌な子供だっただろう。
そんな時アンバー団長、その時はまだ副団長だったけど、彼が小さな子供を連れて騎士見習いの訓練場に来た。
自分よりも幼い、艶々の赤紫の髪と瞳をした美少女。
きっとアンバー副団長の知り合いで、騎士団の訓練の見学に来た、と思っていた。
「エイン、今日はどうして此処に?」
声まで可愛いなんて、とつい見惚れてしまった。
「真面目に、毎日ちゃんと地味な基礎鍛錬しているシルヴィーにご褒美だよ」
「ご褒美?」
「此処ならシルヴィーが全力で戦っても大丈夫だからね」
毎日鍛錬?
全力で戦う?
どう見たって10歳にもなっていない子供が?
ありえないから。
あたしは貴族の子供がお遊びで剣を習い始めたから、騎士の訓練はこんなに厳しいものだ、と教えようとしているんだな、と勝手に納得した。
「そうだね。此処ならお父様にバレないもんね」
ニコッと笑い、シルヴィーと呼ばれた女の子が、アンバー副団長から子供用の小さな剣を受け取る。
子供のお遊びに騎士団の訓練場を使うなんて、と腹が立ったけどお貴族様のやる事に文句は言えない。
あたし達は黙って訓練場の外に出た。
「では、本気で行こうか」
アンバー副団長が剣を構える。
滅多に見られない副団長の剣技が見れる、とは思わないが、貴族の子供がビービー泣くのを見るのは楽しそうだ。
「はじめ」
立会人の声と同時に、あり得ないほど激しい攻防戦が目の前で始まった。
重く剣を打ち合わせる金属音。
剣が空を切り裂く音。
剣圧に押され、踏み締めた足によって砂利が砕ける音。
目を閉じて音だけを聞けば、剣豪同士の本気の試合に思える。
だけどあたしの目は、華奢な女の子がもの凄い速さでエイン副団長と戦っている姿を見ている。
ふいに女の子がニコッと笑顔を見せた。
心臓がドキッとする程の可愛い笑顔。
エイン副団長も一瞬隙ができ、気が付けば女の子がエイン副団長の腹に剣を押し当てていた。
「エインってば、この顔に弱いよねー」
「愛しい娘の笑顔に勝てるものはないよ」
「……冗談抜きで早く奥さん見付けないと、残念な独身老人になるよ」
女の子は呆れた顔でエイン副団長に剣を返し、プルプルと手を振っている。
あれ程打ち合っていたのに、息一つ乱れていないなんて……。
「やはり合格ラインは飛び越していた様だ」
「……なんの?」
「なんだろうね」
エイン副団長が言ってるのは、間違いなく剣受式の試験のことだ。
あのレベル迄到達しないといけないのか、と絶望するより、地味な基礎訓練を突き詰めればあのレベル迄強くなれると思えるのは何故だろう。
「エインと試合して解ったけど、うちの護衛騎士さん達は、手加減はして無かったみたい。後で謝らなきゃ」
これ程の実力者に手加減、あり得ないよ。全力で向かわなきゃ大怪我をするレベルだ。
「シルヴィーのお陰で、ロードライト家の護衛騎士達は騎士団でも欲しい人材だよ」
「伝えておくね。きっと喜ぶよ」
「喜んでもこっちには来ないだろうがね」
「うん。みんな、お父様の事、とっても尊敬してますから」
シルヴィー様の可愛い笑顔に、訓練場に居る騎士達も釣られて笑顔になっていた。
あの日からあたしは心を入れ替え、地味な基礎訓練も毎日、欠かさず行った。
気が付けば第二騎士団の3番手にもなれたし、剣受式の試験にも合格できた。
本当にシルヴィー様に会えて、良かったよ。
若い3人の騎士を見ながらあたしは、自分が初めてシルヴィー様に会った時を思い出した。
12歳で騎士見習いとして騎士団の門を叩いた。
今は平民だけど、元騎士であった父のお陰で、かなり剣が使えたあたしは、随分生意気な子供だった。
見習いの中でも素質がある、と褒められていたから地味な基礎訓練をサボリ周りの大人に対しても生意気で、嫌な子供だっただろう。
そんな時アンバー団長、その時はまだ副団長だったけど、彼が小さな子供を連れて騎士見習いの訓練場に来た。
自分よりも幼い、艶々の赤紫の髪と瞳をした美少女。
きっとアンバー副団長の知り合いで、騎士団の訓練の見学に来た、と思っていた。
「エイン、今日はどうして此処に?」
声まで可愛いなんて、とつい見惚れてしまった。
「真面目に、毎日ちゃんと地味な基礎鍛錬しているシルヴィーにご褒美だよ」
「ご褒美?」
「此処ならシルヴィーが全力で戦っても大丈夫だからね」
毎日鍛錬?
全力で戦う?
どう見たって10歳にもなっていない子供が?
ありえないから。
あたしは貴族の子供がお遊びで剣を習い始めたから、騎士の訓練はこんなに厳しいものだ、と教えようとしているんだな、と勝手に納得した。
「そうだね。此処ならお父様にバレないもんね」
ニコッと笑い、シルヴィーと呼ばれた女の子が、アンバー副団長から子供用の小さな剣を受け取る。
子供のお遊びに騎士団の訓練場を使うなんて、と腹が立ったけどお貴族様のやる事に文句は言えない。
あたし達は黙って訓練場の外に出た。
「では、本気で行こうか」
アンバー副団長が剣を構える。
滅多に見られない副団長の剣技が見れる、とは思わないが、貴族の子供がビービー泣くのを見るのは楽しそうだ。
「はじめ」
立会人の声と同時に、あり得ないほど激しい攻防戦が目の前で始まった。
重く剣を打ち合わせる金属音。
剣が空を切り裂く音。
剣圧に押され、踏み締めた足によって砂利が砕ける音。
目を閉じて音だけを聞けば、剣豪同士の本気の試合に思える。
だけどあたしの目は、華奢な女の子がもの凄い速さでエイン副団長と戦っている姿を見ている。
ふいに女の子がニコッと笑顔を見せた。
心臓がドキッとする程の可愛い笑顔。
エイン副団長も一瞬隙ができ、気が付けば女の子がエイン副団長の腹に剣を押し当てていた。
「エインってば、この顔に弱いよねー」
「愛しい娘の笑顔に勝てるものはないよ」
「……冗談抜きで早く奥さん見付けないと、残念な独身老人になるよ」
女の子は呆れた顔でエイン副団長に剣を返し、プルプルと手を振っている。
あれ程打ち合っていたのに、息一つ乱れていないなんて……。
「やはり合格ラインは飛び越していた様だ」
「……なんの?」
「なんだろうね」
エイン副団長が言ってるのは、間違いなく剣受式の試験のことだ。
あのレベル迄到達しないといけないのか、と絶望するより、地味な基礎訓練を突き詰めればあのレベル迄強くなれると思えるのは何故だろう。
「エインと試合して解ったけど、うちの護衛騎士さん達は、手加減はして無かったみたい。後で謝らなきゃ」
これ程の実力者に手加減、あり得ないよ。全力で向かわなきゃ大怪我をするレベルだ。
「シルヴィーのお陰で、ロードライト家の護衛騎士達は騎士団でも欲しい人材だよ」
「伝えておくね。きっと喜ぶよ」
「喜んでもこっちには来ないだろうがね」
「うん。みんな、お父様の事、とっても尊敬してますから」
シルヴィー様の可愛い笑顔に、訓練場に居る騎士達も釣られて笑顔になっていた。
あの日からあたしは心を入れ替え、地味な基礎訓練も毎日、欠かさず行った。
気が付けば第二騎士団の3番手にもなれたし、剣受式の試験にも合格できた。
本当にシルヴィー様に会えて、良かったよ。
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