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最短記録ですね、きっと。
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「パトリック殿下の仰る通りです。インリン・カーボン男爵令嬢。規則を破り、騒ぎを起こした貴女は今日から3日間謹慎牢に入りなさい」
シルヴィーの背後に、深紅の髪に琥珀の瞳をした教師が人垣から現れて、簡潔に処分をくだした。
あっという間に警備の者達が、ギャーギャー騒ぐピンク頭を謹慎牢へと連れていき、漸く廊下も静かになった。
「序でに皆にも伝えておきます。規則を破るものは、一度目は3日。2度目は5日謹慎牢に入り、3度目は1ヶ月の停学。4度目は退学になります」
引っ詰め髪のまだ若い教師を見て、シルヴィーがギョッとした。
王宮魔術院長官秘書、ナタリア・ガーネット子爵夫人。つまり、兄、ハロルド・ガーネット子爵の妻であり、シルヴィーの義理の姉だ。もっと付け加えれば、エイン・アンバー第一騎士団団長の実の妹でもある。
「……ガーネット子爵夫人、何故此処に?」
「此処ではガーネット先生と呼びましょうね。長官とガーネット子爵から依頼を受けましたので、魔法学の教師に赴任しましたの」
「確かナタリア様は、シルヴィーの義理のお姉様で、王宮魔術院に籍を置かれている筈よね」
ずっとシルヴィーの背中で黙っていたイザベルが不思議そうに首を傾げる。
「はい。おそらく、イザベル、貴女の身辺護衛の為だと思います」
「残念ながら違います。イザベル様の身辺護衛はシルヴィー嬢、貴女に任せる、と子爵は申しておりました」
「長官絡みですか……」
どうやらあの魔術オタクは、何度も断られているのに、シルヴィーを王宮魔術院にスカウトする事を諦めていない様だ。
「はい。ですが長官本人の願いの件はロードライト伯爵様が対処なさってますので、ご心配なく」
ニコッと笑えば優しげなのだが、礼儀作法には物凄く厳しい。
「私は純粋に魔法学の教師に赴任しただけですが、兄からの預かり物がありますので後ほどお部屋に届けます。それから、ロードライト伯爵令嬢、貴女は今日から特別棟に移ってもらいます」
学生寮も警備の観点から一般と、王族やそれに準ずる身分の者達の特別棟に分かれている。
ウィリアムやパトリックは当然、シンシアやイザベルも王族扱いになる為、既に特別棟に入っている。
故に、シルヴィーがいくら有能であろうとも、家の爵位は伯爵なので一般棟に入っていた。
「特別棟ですか。私の身分は伯爵令嬢なのですが?」
「国王陛下のご差配です」
陛下の指示ならば、臣下として従わなければならない事は判るが、どうしても裏を感じてしまう。だが、何故?とごねたとしても決定は覆らないので、素直に受け入れるだけだ。
「判りました」
「では、皆さんも教室に戻りなさい」
パンパン、とガーネット先生が手を叩き、廊下にいた生徒達を教室へと戻した。
シルヴィーの背後に、深紅の髪に琥珀の瞳をした教師が人垣から現れて、簡潔に処分をくだした。
あっという間に警備の者達が、ギャーギャー騒ぐピンク頭を謹慎牢へと連れていき、漸く廊下も静かになった。
「序でに皆にも伝えておきます。規則を破るものは、一度目は3日。2度目は5日謹慎牢に入り、3度目は1ヶ月の停学。4度目は退学になります」
引っ詰め髪のまだ若い教師を見て、シルヴィーがギョッとした。
王宮魔術院長官秘書、ナタリア・ガーネット子爵夫人。つまり、兄、ハロルド・ガーネット子爵の妻であり、シルヴィーの義理の姉だ。もっと付け加えれば、エイン・アンバー第一騎士団団長の実の妹でもある。
「……ガーネット子爵夫人、何故此処に?」
「此処ではガーネット先生と呼びましょうね。長官とガーネット子爵から依頼を受けましたので、魔法学の教師に赴任しましたの」
「確かナタリア様は、シルヴィーの義理のお姉様で、王宮魔術院に籍を置かれている筈よね」
ずっとシルヴィーの背中で黙っていたイザベルが不思議そうに首を傾げる。
「はい。おそらく、イザベル、貴女の身辺護衛の為だと思います」
「残念ながら違います。イザベル様の身辺護衛はシルヴィー嬢、貴女に任せる、と子爵は申しておりました」
「長官絡みですか……」
どうやらあの魔術オタクは、何度も断られているのに、シルヴィーを王宮魔術院にスカウトする事を諦めていない様だ。
「はい。ですが長官本人の願いの件はロードライト伯爵様が対処なさってますので、ご心配なく」
ニコッと笑えば優しげなのだが、礼儀作法には物凄く厳しい。
「私は純粋に魔法学の教師に赴任しただけですが、兄からの預かり物がありますので後ほどお部屋に届けます。それから、ロードライト伯爵令嬢、貴女は今日から特別棟に移ってもらいます」
学生寮も警備の観点から一般と、王族やそれに準ずる身分の者達の特別棟に分かれている。
ウィリアムやパトリックは当然、シンシアやイザベルも王族扱いになる為、既に特別棟に入っている。
故に、シルヴィーがいくら有能であろうとも、家の爵位は伯爵なので一般棟に入っていた。
「特別棟ですか。私の身分は伯爵令嬢なのですが?」
「国王陛下のご差配です」
陛下の指示ならば、臣下として従わなければならない事は判るが、どうしても裏を感じてしまう。だが、何故?とごねたとしても決定は覆らないので、素直に受け入れるだけだ。
「判りました」
「では、皆さんも教室に戻りなさい」
パンパン、とガーネット先生が手を叩き、廊下にいた生徒達を教室へと戻した。
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