38 / 114
仮面舞踏会は華やかに。
しおりを挟む
結果から言うと、春の舞踏会を仮面舞踏会にして正解だった。
この春の舞踏会で社交会デビューをする令嬢、令息の数はかなり多かった。
その大量の令嬢や令息達が皆、似たような白いドレスやタキシードを着ている。うっかりするとパートナーを見失い、探すのが一苦労な程だ。
シルヴィーも白いドレスを纏い、レイモンドにエスコートされて国王陛下と妃殿下や他の王族方に謁見し、ファーストダンスを踊ることになっている。
初めてお目にかかった国王陛下と王妃殿下は、目を見張るほどの美男美女だった。
国王陛下はエメラルドよりも深みのある緑の髪に赤茶色にも見える赤紫の瞳で、ウィリアムはアレキサンド王国直系の色を強く引いた、国王陛下似だと分かる。
王妃殿下はパール公爵家の御令嬢らしく、真珠色の髪にブラックパールのような、艶やかな灰色の瞳が優しげだった。
多くの言葉を交わす事はなかったが、2人ともシルヴィーを好意的に見ているようで、シルヴィーは、はにかみながら2人の前を後にした。
大勢で踊るファーストダンスの後、多くの貴族の令息達がシルヴィーをダンスに誘おうとしていたが、エインやレイモンドそして護衛としてシルヴィーに付いていたダドリー達がお披露目が終わったシルヴィーを控室に連れて行き、無事影武者のレミと変わることが出来た。
特に目立った特徴のない白いドレスと仮面を付けた影武者役のレミに令息達が群がっていたが、別人だと分かるとすごすごと退散していく。
その後もドレスと仮面を変えたシルヴィーを見つけられなかった令息達は渋々自分のパートナーや他の令嬢達と踊る事になり、レミは如才なく任務を終え、満足げにしていた。
「この作戦が有効なのは今回だけだけど、あの群がり方を見ると次も対策を考えないと駄目ね」
ワインレッドの大人びたドレスを纏うシルヴィーがため息を吐くとさり気なく、黒い夜会服を着こなして婚約者のような顔でエスコートをしているダドリーがクスリと笑い、手を差し出してきた。
「お嬢様、一曲お相手をお願いしても宜しいでしょうか?」
「そうね。ファーストダンスだけで帰るのはちょっと寂しいもの」
躊躇いもせずダドリーの手に手を重ね、フロアへ向かった。
髪色に近いワインレッドのドレスが広がる度、深紅の薔薇の花が咲いたような美しいシルヴィーに、彼女と気が付かない者達も見入っていた。
「美しい方、一曲お相手をお願いします」
何人もの男性から誘いがあったが、シルヴィーはやんわりと
「彼以外とは踊らないように、と父から申しつけられておりますので」
と、微笑んでみせれば大体の男は哀しげに頷いてシルヴィーの前から消えていった。
「上手い断り方ですね」
「踊れば私が誰だか判るものも居るでしょうし、詮索されるのは面倒です」
不意にシルヴィー達の視界にウィリアムよりも紫掛かった淡い緑の髪をした貴族が漆黒の髪をした令嬢と楽しげに踊る様子が見えた。
パトリックとシンシアだと、知っているものならすぐに判る。
「ラリマー宰相は本当に有能な方ですね」
「お嬢様の助言で動かれたのでしょう」
仮面に隠れ素顔は判らないが、2人の様子は見ている此方も楽しくなる程で、シルヴィーはホッとしていた。
「きっと、かの国は良き隣国になってくれる筈です」
後は、大きなトラブルが無い限り此方から接触する必要はない。
あの2人は、お膳立てされた物ではなく、自分達の気持ちを優先した関係が築ければいい。
この春の舞踏会で社交会デビューをする令嬢、令息の数はかなり多かった。
その大量の令嬢や令息達が皆、似たような白いドレスやタキシードを着ている。うっかりするとパートナーを見失い、探すのが一苦労な程だ。
シルヴィーも白いドレスを纏い、レイモンドにエスコートされて国王陛下と妃殿下や他の王族方に謁見し、ファーストダンスを踊ることになっている。
初めてお目にかかった国王陛下と王妃殿下は、目を見張るほどの美男美女だった。
国王陛下はエメラルドよりも深みのある緑の髪に赤茶色にも見える赤紫の瞳で、ウィリアムはアレキサンド王国直系の色を強く引いた、国王陛下似だと分かる。
王妃殿下はパール公爵家の御令嬢らしく、真珠色の髪にブラックパールのような、艶やかな灰色の瞳が優しげだった。
多くの言葉を交わす事はなかったが、2人ともシルヴィーを好意的に見ているようで、シルヴィーは、はにかみながら2人の前を後にした。
大勢で踊るファーストダンスの後、多くの貴族の令息達がシルヴィーをダンスに誘おうとしていたが、エインやレイモンドそして護衛としてシルヴィーに付いていたダドリー達がお披露目が終わったシルヴィーを控室に連れて行き、無事影武者のレミと変わることが出来た。
特に目立った特徴のない白いドレスと仮面を付けた影武者役のレミに令息達が群がっていたが、別人だと分かるとすごすごと退散していく。
その後もドレスと仮面を変えたシルヴィーを見つけられなかった令息達は渋々自分のパートナーや他の令嬢達と踊る事になり、レミは如才なく任務を終え、満足げにしていた。
「この作戦が有効なのは今回だけだけど、あの群がり方を見ると次も対策を考えないと駄目ね」
ワインレッドの大人びたドレスを纏うシルヴィーがため息を吐くとさり気なく、黒い夜会服を着こなして婚約者のような顔でエスコートをしているダドリーがクスリと笑い、手を差し出してきた。
「お嬢様、一曲お相手をお願いしても宜しいでしょうか?」
「そうね。ファーストダンスだけで帰るのはちょっと寂しいもの」
躊躇いもせずダドリーの手に手を重ね、フロアへ向かった。
髪色に近いワインレッドのドレスが広がる度、深紅の薔薇の花が咲いたような美しいシルヴィーに、彼女と気が付かない者達も見入っていた。
「美しい方、一曲お相手をお願いします」
何人もの男性から誘いがあったが、シルヴィーはやんわりと
「彼以外とは踊らないように、と父から申しつけられておりますので」
と、微笑んでみせれば大体の男は哀しげに頷いてシルヴィーの前から消えていった。
「上手い断り方ですね」
「踊れば私が誰だか判るものも居るでしょうし、詮索されるのは面倒です」
不意にシルヴィー達の視界にウィリアムよりも紫掛かった淡い緑の髪をした貴族が漆黒の髪をした令嬢と楽しげに踊る様子が見えた。
パトリックとシンシアだと、知っているものならすぐに判る。
「ラリマー宰相は本当に有能な方ですね」
「お嬢様の助言で動かれたのでしょう」
仮面に隠れ素顔は判らないが、2人の様子は見ている此方も楽しくなる程で、シルヴィーはホッとしていた。
「きっと、かの国は良き隣国になってくれる筈です」
後は、大きなトラブルが無い限り此方から接触する必要はない。
あの2人は、お膳立てされた物ではなく、自分達の気持ちを優先した関係が築ければいい。
75
お気に入りに追加
368
あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる