［完結］18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。

閑話 ジェフリー・ラリマーの視点。

ジェフリー・ラリマー視線

シルヴィーが剣舞を舞っていた時、1人の少年が回廊から訓練場を見ていた。

銀色の髪に薄い水色の瞳をした、中性的な美しさを滲ませる現宰相の嫡男であるジェフリー・ラリマー侯爵令息。

貴族の嗜みとして剣は使えるが、イーリスを使えるほどでは無い彼は今、自分が見ている状況に驚いている。

自分よりも幼い少女が重いイーリスを持って、見たこともない程の素晴らしい剣舞を舞っている。

剣の力量など分からないが、彼女の剣舞が美しい事くらいは理解できる。

「なんて美しいのだろう」

ため息混じりに思わず声まで出ていた。
赤紫の髪がイーリスの銀色の光を受け煌めき、しなやかな四肢が優美な舞を舞う。

胸が締め付けられるほどの感動に動けずにいると彼女はひらり、と舞を終えアンバー団長に何かを話してから何処かへ走り去ってしまった。

「相変わらず、シルヴィーの剣舞は美しい」

アンバー団長の声が彼女の名前を教えてくれた。
だが、シルヴィー、という名は珍しく無い。

何処の令嬢なのか分からないが、それでも名前が分かっただけでも儲けものだ。

「彼女ならば父上も納得して下さるだろう」

何を考えたのかは彼だけにしか分からないが、水色の瞳を細め楽しげに笑って回廊を後にした。