[完結]18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。

紅月

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とんでもない人達。

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「魔法陣を見せて下さい」

シルヴィーの描いた魔法陣を食い入る様にカインが見る中、ウィリアムは小声でユーノに

「ユーノ、発動者の力が弱いと効果も弱いのか?」

と、聞けばユーノは困惑した顔で返事をする。

「発動者の力はアイテムの効果には何の影響もありません」
「そうなると……」
「シルヴィー様の魔力が桁違いなだけです」
「どのくらい?」
「あのアイテムのレベルはおそらく70以上ですから、可能性として80以上と……」

「いいや、あの子供の魔力は既にレベル100を超えて、全属性の魔法も使えているはずだ」

突然、会話に割り込んで来た声にユーノ達が周りを見ると自分達の背後に2人、気配もなく立っている。

「精霊王様、魔獣王様」
「最高級の魅了魔法アイテムが砕かれた、と聞いて見に来たが、これは拾い物だ」

漆黒の髪は無造作に束ねられているが艶やかで、猫の目の様な金色の瞳は獰猛な光を秘めている。

「魔獣王様、まさか」
「我が眷属に苦痛をもたらすアイテムを砕くなどと言う、こ気味良い事をしたものの顔を見に来ただけよ」

ユーノが青褪めたが魔獣王は楽しげに笑うだけで殺気など無かった。

「私も眷属にとって負担でしか無いアイテムが割れたと聞いたから礼を言いに来ただけだ」

エメラルドの様な輝く緑の髪に緋色の瞳の中性的な美貌の精霊王はクスクス笑っている。

「ユーノさん……」

用があって振り返ったシルヴィーが固まった。
当然だろう。ゲーム内では全く触れられていないがこの世界にはいる事を知っているが、此処には居るはずがない精霊王と魔獣王がニヤニヤ笑いながら立っているのだから。

「君が魅了魔法のアイテムを砕いた子だな」
「魔獣王様ですか?」
「いかにも」
「お聞きしたい事があります。此方のレシピをご覧ください」

ショックからすぐに立ち直るとシルヴィーは鞄からアイテムのレシピを幾つも取り出し、魔獣達に負担なく、此方の話を聞いてもらえるアイテムを作りたい、と熱く語り始めた。

「服従魔法のアイテムのレシピも持っているのか?」

精霊王が魔獣王が持っているレシピを見ながら聞けば、シルヴィーはすかさずもう何枚かを取り出した。

「あり得ないですから、普通」

ユーノが呆然としながら、レシピについて話し合っている4人を見ながら呟いた。

「だよなぁ。シルヴィーと居ると規格外の事ばかり起きそうな気がする」

知り合ってまだ2日しか経ってないのに、驚く事に疲れるほど驚かされてばかりだ。
だけどウィリアムはなんだか楽しくなってきた。

初めは小煩い存在だ、と思っていたのにここまで規格外の存在だと逆にワクワクして来るから不思議だ。

「ところで、何故私が呼ばれたんですか?カイン殿が居れば私など」

ユーノが不思議そうにシルヴィーの横顔を見ていた。

「魔獣さん達や精霊さん達に負担がないアイテムが出来れば、ユーノさんを通して冒険者さん達や勇者さん達に使ってもらいたいのです」

話し合いがある程度まとまった所でシルヴィーが真面目な顔でユーノを見た。

「そして俺には父上を動かして今の魅了魔法のアイテムや服従魔法のアイテムを使うことを禁じる法律を作れって事か?」

ウィリアムか悪戯っ子のような顔でシルヴィーを見ると、シルヴィーは可愛い笑顔で頷いた。

「はい。こんないろんな人に負担しかない物はちゃっちゃと無くなって欲しいですから」

シルヴィーの目がノーマルルート、阻止したいでしょ、と本音を言っているのに気が付いているのはウィリアムだけだろう。

「父上の前でこいつが多くのものの負担でしか無いって事を証明できれば話は早いだろう」
「新しいアイテムの方はシルヴィー様のおかげで今までよりも安価で、魔獣や精霊に負担の無い物が出来そうですのでユーノさん、頑張って勇者や冒険者に売り込んで下さい」

ウィリアムとカインが楽しげにレシピや魔法陣を見せながらユーノの心情を揶揄っている。

「ならばウィリアム殿下、先日道具屋からの情報でジルコニア伯爵家の者がこの2つのアイテムを大量に買った、とあります。何か聞いておりませんか?」

流石ギルドマスター。関連がありそうな情報はすでに押さえていたようだ。

「ジルコニア伯爵ねぇ。長女がジェイド総騎士団長の嫡男と婚約したい、と申請があったね」

君、本当に13歳?
つい一昨日までは無能に近い王子様だった気がするんですが。
綺麗な顔の王子様が腹の中がすでに真っ黒い顔で冷ややかに笑う。

「ジルコニア伯爵って言えば、カインに嫌がらせしている奴もジルコニア伯爵家の1人だったね」

もう一回言うけど、君、本当に一昨日までは無能な王子様だった?

シルヴィーが固まったまま、目だけでウィリアムに疑問を投げ掛けている。

「……別に調べた訳じゃ無いよ。カインに話をしに行った時、あっちがでかい声で言ってたのを聞いただけ」

ちょっとだけ赤くなった頬にはまだ子供らしさが残っているのが不思議だ。

「なんて言ってました?予想からだと、次期錬成士長は組織の為、平民では無く貴族が成るべきだから辞退しろって所ですか?」

ユーノとカインがシルヴィーの言葉に固まった。
まだ、11歳でしか無く全く政治など知らないはずの子供が何故そこまで推察出来るんだ。

「何を考えたらそうなるんだ?馬鹿が上に立つより有能な人物が上に立つ方が組織も利益が得られるって事くらい分かるだろう」

2人に追い討ちをかける様な魔獣王の意見に精霊王が頷いている。

「プライドだけがアホみたいに高い無能者は貴族であっても邪魔だよね。排除するか」

腹の黒さを隠しもしないウィリアム。

「俺、とんでもない方と知り合ってしまった気がする」
「奇遇ですね、私もそう思ってます」
「だが、味方であれば心強いぞ」

カインとユーノが小声で話していると、楽しそうな精霊王が口を挟んで来た。
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