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第二部 獣人武闘祭

第367話(実況席)

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「うおぉぉ……こらあかん、こらあかんわ」

「タ、タマラ選手が、顔面に正拳をくらって、三メートルはぶっ飛びましたね……ダウンです。も、もしかして、これで決まってしまうのでしょうか」

「いや、直撃の前に、なんとかガードしよったからな。たぶん立つで。……ほれ、立った。しかし、驚いとるな。おちびの頭上に、大量の『?』マークが見えるようやで」

「そ、そりゃそうですよ。狐仮面選手って、合気道の選手なんでしょ? なんであんなに、強烈な打撃が使えるんですか?」

「くーちゃんは、知らへんのやったな。狐仮面……まあ、今日は最初から仮面なしで出てきよったけど、あいつの顔、誰かに似てると思わへんか?」

「あっ、私も、誰かに似てるなーって思ってたんですよね。ええっと、そうです、ハツネ・ゾーダンク選手に、よく似ていますね」

「あいつ、そのハツネの妹らしいで」

「えーっ、そうなんですか? ……なんで狐仮面なんて名乗ってるんです?」

「そんなんうちかて知らんわ。ただ一つ言えることは、あいつはゾーダンクの家のもんっちゅうことや。せやったら、あの強烈な打撃も、まったく不思議やない。ゾーダンク流格闘術は、投・極・打、すべてに通じとるからな」

「じゃあ、どこにも穴がない選手ってことですか?」

「穴がないどころか、すべての能力が優秀、すべての才能が豊穣。一切の弱点無し! そんな感じやろ」

「な、なんか、恵まれすぎてずる~い」

「うちもそう思う」

「顔も可愛いし、スタイルもいいし、天は二物三物四物を与えるものなんですね……」

「顔といえば、さっきから気になっとったんやけどな」

「なんです?」

「狐仮面のやつ、なんちゅう腑抜けた顔して戦っとるんや」

「あっ、私もそれ、思いました。なんか、心ここにあらずって感じですよね」

「ほんま恐ろしいで、あいつ。別のこと考えながら、片手間で、これだけの戦いをしとる。はじめっから優勝候補筆頭やとは思とったけど、まさかここまでやとは思わんかったわ」

「狐仮面選手は、J1グランプリ前チャンピオンのシルヴァさんも認める『怪物』ってことですね」

「せやな。ほんまもんの化け物や」

「タマラ選手に、勝ち目はあるのでしょうか?」

「う~ん……まあ、まだあきらめてはおらんようやけどな。ほれ、また突進に行ったで」

「そしてまた投げられる、と。なんだかかわいそうになってきちゃいました……」
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