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第二部 獣人武闘祭
第363話
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「ふぅ、困ったね。ノエルがいないと、わがままタマラに逆戻りだ」
パトリックは、ふぅっと息を吐いて、『説得してもらえませんか』と言うように私を見た。私は、彼の目を見て、頷いた。
「タマちゃん。パトリックさんを困らせちゃ駄目よ。タマちゃんのことを思って、調整メニューを組んでくれてるんだから」
「でも、あたし、ディーナと遊びたい……調整、やだ……ぐすっ」
タマラはめそめそとべそをかき始めた。
そこで私は、ちょっとしたことに気がつく。
……この子、最初に会った時より、幼くなってない?
外見ではない。内面がだ。
最初から奔放ではあったが、もう少ししっかりしていた気がする。
まあ、あの時は初対面だから気を張っていただけで、12歳なら、素の性格は、案外こんなものかもしれない。私はタマラを諭すように、言った。
「それじゃあ、試合が終わったら、いっぱい遊ぼうね」
「本当? あたしが勝ったら、いっぱい遊んでくれる?」
「うん。でも、勝ち負けより、私はタマちゃんにクリーンなファイトをしてほしいな」
「クリーンなファイト?」
「相手を、むやみやたらに痛めつけたり、残虐なことをせず、純粋に技を競い合うような試合のことよ」
「ディーナは、その方が好きなの?」
「ええ。それに、そういう試合をすれば、きっとお客さんも、タマちゃんのことを好きになってくれるわ」
「そうなんだ……なら、そうする……」
タマラのぐずりが収まったのを見計らって、パトリックは再び声をかけた。
「さあ、行こうか、タマラ」
「はい……。ディーナ、最後に、ナデナデして?」
彼女のおねだり通り、私は、金色の柔らかい髪を撫でてやる。タマラは、それでひとまず満足したのか、ニカッと笑って、パトリックと部屋を出て行った。
「と、とんでもない甘えん坊ニャ。僕の時と全然態度違うニャ。ここまで違うとむしろ清々しいくらいニャ」
「まだ、子供なのよ」
「あんな酷い試合をした子と、とても同一人物とは思えないニャ」
「あの時は、特別だったのよ。……きっと」
「そういえばタマラちゃん、今日は、あの雌犬との試合だったニャ。先生は、どっちが勝つと思うニャ?」
どっちだろう。
タマラの強さは言うまでもないが、再選考会で見たカズネも、以前とはまったくの別人である。実際に戦ってもいない状態で、簡単にどっちが勝つとは言えない気がする。
ハッキリしている願いは、どちらにも酷い怪我をしてほしくないということだ。
パトリックは、ふぅっと息を吐いて、『説得してもらえませんか』と言うように私を見た。私は、彼の目を見て、頷いた。
「タマちゃん。パトリックさんを困らせちゃ駄目よ。タマちゃんのことを思って、調整メニューを組んでくれてるんだから」
「でも、あたし、ディーナと遊びたい……調整、やだ……ぐすっ」
タマラはめそめそとべそをかき始めた。
そこで私は、ちょっとしたことに気がつく。
……この子、最初に会った時より、幼くなってない?
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最初から奔放ではあったが、もう少ししっかりしていた気がする。
まあ、あの時は初対面だから気を張っていただけで、12歳なら、素の性格は、案外こんなものかもしれない。私はタマラを諭すように、言った。
「それじゃあ、試合が終わったら、いっぱい遊ぼうね」
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「うん。でも、勝ち負けより、私はタマちゃんにクリーンなファイトをしてほしいな」
「クリーンなファイト?」
「相手を、むやみやたらに痛めつけたり、残虐なことをせず、純粋に技を競い合うような試合のことよ」
「ディーナは、その方が好きなの?」
「ええ。それに、そういう試合をすれば、きっとお客さんも、タマちゃんのことを好きになってくれるわ」
「そうなんだ……なら、そうする……」
タマラのぐずりが収まったのを見計らって、パトリックは再び声をかけた。
「さあ、行こうか、タマラ」
「はい……。ディーナ、最後に、ナデナデして?」
彼女のおねだり通り、私は、金色の柔らかい髪を撫でてやる。タマラは、それでひとまず満足したのか、ニカッと笑って、パトリックと部屋を出て行った。
「と、とんでもない甘えん坊ニャ。僕の時と全然態度違うニャ。ここまで違うとむしろ清々しいくらいニャ」
「まだ、子供なのよ」
「あんな酷い試合をした子と、とても同一人物とは思えないニャ」
「あの時は、特別だったのよ。……きっと」
「そういえばタマラちゃん、今日は、あの雌犬との試合だったニャ。先生は、どっちが勝つと思うニャ?」
どっちだろう。
タマラの強さは言うまでもないが、再選考会で見たカズネも、以前とはまったくの別人である。実際に戦ってもいない状態で、簡単にどっちが勝つとは言えない気がする。
ハッキリしている願いは、どちらにも酷い怪我をしてほしくないということだ。
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