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第二部 獣人武闘祭

第350話

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「やれやれ、これで一件落着ニャ」

 ミャオは、心からホッとした表情でベッドに腰かけた。
 その脇には、昨日のうちに私がまとめておいた荷物がある。

 試合に負けた以上、今日の昼までには、この宿を出なければならない。まだグランディアに滞在して、残りの試合を見ようと思ったら、どこか新しい宿を見つけなければ。

 ミャオに観戦の意志を確認すると、ぜひ見たいとのことだ。私は頷くと、昨日の疲れが残っているであろうミャオを残して、新しい宿探しのために街へ出た。

 さてさて、食事やらなんやらで毎日そこそこお金を使っていたが、どれくらい所持金が残っているだろうか。私は、財布の中身を確認する。

 何も、ない。

 うん。
 知ってた。
 今日の朝ご飯で、全部使いきったからね。

 うわあ、どうしよう。宿どころか、グランディアにこのまま滞在するなら、ご飯の心配もしなきゃならない。私は、途方に暮れた。

 ……悩んでる時間がもったいないわね。
 駅前で、靴磨きのバイトでもしてみようかしら。
 上手くいけば今日のご飯代くらいは稼げるかもしれない。

 そう思って、駅の近くまで来たが、運の悪いことに、ぱらぱらと雨が降ってきた。こんな天候では、駅前の通りで靴磨きを頼む人間などいないだろう。

 段々、雨の降りが強くなってきた。
 私は、とりあえず目についた喫茶店の軒下に、雨宿りさせてもらう。

 ふぅ。
 早く晴れてくれないかな。

 ゴンゴンゴン。

 わっ、なんなの、この音?
 喫茶店の窓が、内側から叩かれたらしい。

 私は怪訝な顔で、音の発生源を見る。
 そこには、ニコニコと手を振るタマラがいた。

 落ち着いてよく見ると、この喫茶店は、タマラと再会した日に入った、あの店だった。私は、タマラに手招きされて、中に入る。……先日の残虐な戦いぶりを思い出し、ほんの少しだけ躊躇したが、結局、入った。窓の向こうに見えたタマラは、私の知る無邪気で可愛いタマラだったからだ。

 入ってから、気がつく。
 私は今、無一文だ。

 パリッとした身なりのウェイターが注文を取りに来た時、なんて言えばいいんだろう。『お金はないけど知り合いに手招きされたので入店しました。水だけでいいです』とでも言うのか。

 そ、それは、あまりにも恥ずかしい。
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