二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第349話

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 翌日。

 もう次の試合について考える必要がなくなったので、生活リズムを調整する理由もなくなったミャオは、朝の八時に目を覚ました。そして、突然こんなことを言ってきた。

「先生。300万ゴールドって、稼ぐの大変ニャ?」

 大変に、決まっている。

 そういえば、昨日も300万ゴールドがどうとか言ってたが、何かあるのだろうか? 私が詳しく話すように言うと、ミャオはネルロとその母親のこと、そしてネルロとした約束について教えてくれた。

「僕、試合に関しては何の悔いもないニャ。スッキリした気分ニャ。でも、賞金は貰えなかったから、ネルロちゃんとの約束を果たせないことだけが心残りなのニャ。だから、なんとかして300万ゴールド稼ぎたいのニャ」

「そ、そうは言ってもねぇ……とても一朝一夕に何とかなる金額じゃないからなあ……」

「えっちなお店で働いても無理ですかニャ?」

「えっちなお店で働いてもすぐには無理よ……」

「マジですかニャ。そりゃ大変だニャ」

 私は腕組みをし、何とか知恵を絞ろうとする。
 しかし、もともと金策のようなことは苦手なのだ。
 何か別の方法で、ネルロを助けてあげることはできないだろうか。

 そうだ。

 別にお金を集めなくても、ネルロの母――スライムを培養できるような能力のある人に頼めばいいのだ。ちょうど一人、心当たりがある。

「ミャオ、300万ゴールド稼ぐのはちょっと無理だけど、私の知り合いに、モンスターの研究をしてる僧侶のお爺ちゃんがいるの。その人に頼めば、ネルロさんのお母さんを助けてもらえるかもしれないわ」

「ほんとですかニャ!?」

「ええ。昔、私と一緒に勇者ラジアスと旅をしていた仲間よ。今じゃ引退して、大学で先生をやってるの。生命科学研究所なんて怪しげな所より、よっぽど信用できるわ。早速、電話してみるわね」





 話は、驚くほど簡単についた。

 彼は少しだけマッドサイエンティスト的なところがあるので、国には内緒で、すでに何度もスライムの培養をしたことがあるという。いやしくも勇者の仲間だった者がそれでいいのかと思わないでもないが、私たちにとっては救いの神だ、この際、細かいことを言うのはやめておこう。

 すぐにネルロにも連絡して、彼のところに向かうように言った。ネルロは受話器の向こうで礼を述べるうちに、興奮と感動が頂点に達したのか、これまでで一番の奇声を上げた。
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