二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第345話(アニー視点)

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 もう一度テイクダウンを奪って、チョークスリーパーを狙うか。

 よし。
 行こう。

 うがっ。

 突っ込んだところに、膝蹴りを合わせられた。
 さっきのタックル、一度見ただけでタイミングを覚えられたか。

 まったく。
 いいセンスしてるよ。

 ぐぅっ。
 またローだ。

 いたい。
 めちゃくちゃいたい。

 普通、試合中ってアドレナリンがガンガン出るから、あんまり痛いとか感じないんだけどな。これ以上食らうと、タックルにも行けなくなる。打撃で応戦するか。

 私はローキックを打ち返す。

 んがっ。
 なんと、ミャオちゃんは私の脛に、膝をぶつけるようにして防いできた。

 いったぁ~。
 防御が、そのまま攻撃になる、交差法。

 私は、この技を知っている。
 なっちゃんが、よく使っていた技だ。
 この子の小さな体の中に、なっちゃんの技が生きている。

 さっきの、寝技の攻防もそう。

 ミャオちゃんが私の攻めを必死に防ぎ、逃げる時。その動きに、なっちゃんのクセみたいなものが、ありありと見て取れた。きっと、いっぱいいっぱい、一緒に特訓したんだろうね。

 やっぱり、妬けちゃうな。

 あっ、やばい。
 一気に、来た。

 ローが効いてるのを見て、ここが決め時と判断したんだね。
 いい勘してるよ。

 拳、肘、足、膝、踵、掌底、足刀、貫手。
 鋭い打撃が、雨あられと飛んでくる。

 三分の一は何とか防いだが、三分の二は、まともに食らった。
 体格差がなければ、もう倒されているだろう。

 なんて攻撃なの。

 ミャオちゃんのプロフィール、パンフレットで見たけどさ。

 身長157cm。体重にいたっては、たったの59kg。
 身長185cm。体重93kgの私とは、比較にもならない体格だ。

 なのに、この打撃の威力。

 大きな私の体が、ミャオちゃんの一撃を食らうたび、縦に、横に、ずれる。

 私は、反撃もままならず、じりじりとロープ際に追いつめられていく。

 凄まじい突きが、私のみぞおちに拳丸々一個分めり込む。

 おぇっ。
 苦痛の雷光が、腹から全身に広がっていく。
 足から、力が抜けるのが分かった。

 しまったな。
 こんなことなら、あの時、もたもたせずに、腕を折っておけばよかった。

 ふふ。
 今からでもいいから、折らせてくれない?

 駄目か。
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