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第二部 獣人武闘祭

第341話(実況席)

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「昨日の試合がお休みになっちゃったから、一日ぶりですね、シルヴァさん」

「せやな。……なんか自分、焼けてへん? 日光浴でもしたん? このクソ暑いのに」

「えへへ、せっかくのお休みだったんで、昨日、彼と海に行ってきたんです」

「えっ!? 自分、彼氏おるん!?」

「そりゃ、いますよ。いい歳ですし。シルヴァさんだって、彼氏くらいいるでしょ?」

「…………いや」

「あっ、そっか、シルヴァさん、もう結婚してるんですね。ふふ、旦那さんがいちゃ、彼氏はいないですよね」

「…………うち、独身や」

「えっ……」

「…………」

「あっ、なんか、その、すいません……」

「なんであやまんねん……よけい惨めになるやろ……」

「まあまあ、シルヴァさん、可愛いから、その気になったらすぐに彼氏、できますって」

「その思いやりがつらい……」

「さあ、そろそろゴングです! 打撃のスペシャリスト、ネコカラテのミャオ選手と、組み技のスペシャリスト、プロレスラー、ミス・マウンテンゴリラ選手! いったいどんな激闘が繰り広げられるのでしょうか!」

「はぁ……テンション下がってもうたし……もう帰ろかな……」

「まあまあ」



※※※※※【アニー視点】※※※※※



 乾いた音を立てて、ゴングが打ち鳴らされる。
 それと同時に、私は蜘蛛のように身を屈めて、ミャオちゃんへと突進した。

 超低空の、タックル。
 慌てて迎撃しようとするミャオちゃんの膝蹴りをかいくぐる様にして、軸足を取る。

 そして、テイクダウン。

 私は、休まない。
 抱えたミャオちゃんの軸足に、ヒールホールドをかける。

 おっと、はずされた。
 やるじゃない。

 私は即座に体を滑らし、今度は右腕を狙う。
 腕ひしぎ逆十字固め。

 惜しい。
 こいつもはずされた。

 すごいすごい。
 それ、『打撃屋さん』の動きじゃないよ。

 かなり徹底的に、寝技の練習、したんだね。
 動きを見ればわかる。

 この逃げ方。
 この防ぎ方。
 なっちゃんに習ったんだね。



※※※※※【実況席】※※※※※



「おぉ~っと! 試合開始から、ミス・マウンテンゴリラ選手がテイクダウンを奪い、寝技の猛攻です!」

「なんや、この前の派手なショーみたいな試合とは打って変わって、遊びの要素が一切ないな」

「しかしミャオ選手、慌てながらもなんとかミス・マウンテンゴリラ選手の寝技を防いでいます!」

「なかなか器用やな。猫耳獣人独特の柔らかい体を、上手につこて逃げとるわ」

「資料によると、ミャオ選手は四ヶ月前まで、寝技の寝の字も知らない状態だったそうですよ」

「へえ、たった四ヶ月で、本職のレスラーと一応はやり合えとるんやから、大したもんやな」

「一応って、私の目には互角に見えますけど……」

「ふふ、素人やなあ。まあ、見とってみ」
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