二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第320話

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「ニャッ! なんニャこいつ! 怪しいニャ!」

 警戒するミャオを、ハツネが落ち着かせる。

「大丈夫ですよ。この方は確か、8人目の本戦出場者。確か……狐仮面さんでしたよね?」

「狐仮面って……まんまニャ……」

「お互い、頑張りましょうね」

 ハツネは、怪しい仮面女にもにこやかに微笑み、手を差し出した。
 狐仮面は右手でハツネの手をぎゅっと握ると、左手で仮面を外した。

「お久しぶりです……姉さま……」

 感極まったように、幸福そうな顔を浮かべる狐仮面改め、カズネ。それを確認した瞬間、ハツネの顔が変わった。不快を通り越した、嫌悪の表情だ。握っていた手を一瞬で振りほどくと、ハツネはカズネに背を向け、私とミャオに一礼をして、足早に去っていった。

「姉さま!」

 カズネが、悲痛な声で呼びかけるが、ハツネは一度も振り返ることはなかった。後には、ぽかんとする私とミャオ、そしてしょんぼりとうなだれるカズネが残された。

「あれっ、お前、よく見たらあの雌犬ニャ。なんか、随分おっきくなったニャ」

「姉さま……どうして……」

 ミャオの問いかけにも、カズネは茫然自失といった表情で答えない。
 ……先程のハツネの反応は、とても血を分けた妹に取る態度ではなかった。

 いったい、この姉妹に過去、何があったのだろう。

 興味があるが、悲しみに打ちひしがれるカズネには、どうも聞きづらい。
 そんな私の代わりに、ミャオが単刀直入に尋ねた。

「あの綺麗なお姉さん、お前のお姉ちゃんニャ? お前、お姉ちゃんに嫌われてるのニャ?」

 そう聞かれた瞬間、カズネはクワッと目を見開いてミャオに顔を近づけた。

「はぁ!? 何言ってるんです!? 変なこと言わないでもらえます!? 私が姉さまに嫌われてるって!? そんなことあるはずないじゃないですか!? 私たちは近所でも評判の仲良し姉妹だったんですよ!? 何を根拠に嫌われてるとか思うんですか!? ねえ!? 聞かせてくださいよ!?」

 あの上品なカズネが、顔を真っ赤にして、唾を飛ばしながらミャオをまくしたてている。凄い迫力だ。ミャオはたじたじといった様子で、気弱に言葉を返していく。

「だ、だって……あんなに優しかったのに、お前の顔を見た途端、怒って行っちゃったニャ……普通、誰が見ても嫌ってるって思うニャ……」
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