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第二部 獣人武闘祭
第319話
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何気なく聞いた言葉で、ハツネの表情は一変した。
一瞬だけのことだったが、柔和で優しい微笑みの中に、明らかな不快感が浮かんだのだ。驚いて、その後の言葉を紡げずにいると、広間の入り口から、とてとてという足音が聞こえた。
「せんせぇ~」
ミャオだ。
助かったわ。
これで嫌な空気も変わるだろう。
そう思って、視線をミャオに向ける。
そこには、見知らぬ美少女がいた。
豪華でありながら派手すぎない髪飾りで髪をまとめ、どうやって作るんだろうこんな服と思うほどフリフリヒラヒラが付いたドレスを身にまとい、歩きにくいのかスカートを軽く持ち上げる姿が絶妙に可愛らしい。顔にも軽くお化粧をしているようで、彼女の柔らかそうな頬が、チークの赤味でよりキュートに強調されていた。
私は、思わず尋ねた。
「あの、どなたですか?」
「何ボケとるニャ。僕ですニャ」
分かってる。
分かってはいたが、一応確認せずにはいられなかったのだ。
へえぇ……
これは、凄い。
馬子にも衣装というか、猫子にも衣装というか。
プロの着付けが凄いのが、思った以上にミャオの素材が良かったのか。
私はすっかり化けたミャオに、見とれていた。
「まあ、可愛い」
そう声をかけたのは、ハツネだった。
ミャオは、照れたようにはにかむ。
衣装が変わったせいなのか、借りてきた猫のように大人しい。
「綺麗なお姉さんに褒められたニャ。先生も、ボケッとしてないで、何か言ってニャ」
そう言って、上目遣いに、こちらを見る。
なんというか、どストレートに可愛くて、素直に褒めるのが照れくさい。
「あー、うん。いいんじゃない。なかなかいいわよ、うん」
「もう、なんですか、その褒め方。それじゃ、気持ちが伝わりませんよ? ほら、もっと心を込めて、ね?」
ハツネにからかうように言われ、なんだかますます照れてしまう。
でも、なかなか朗らかで、良い雰囲気だ。
さっきの不穏な空気が変わってよかった。
トットット。
おや、誰だろう。
こんなパーティー会場で、小走りに駆けている。
トットットット。
足音が、こちらに近づいてくる。
私とミャオ、ハツネは、そろって足音の主を見た。
それは、麗しい着物姿に、狐の仮面をかぶった女性だった。
走ってきたせいか、仮面の下で、んふーんふーと息を荒げている。
一瞬だけのことだったが、柔和で優しい微笑みの中に、明らかな不快感が浮かんだのだ。驚いて、その後の言葉を紡げずにいると、広間の入り口から、とてとてという足音が聞こえた。
「せんせぇ~」
ミャオだ。
助かったわ。
これで嫌な空気も変わるだろう。
そう思って、視線をミャオに向ける。
そこには、見知らぬ美少女がいた。
豪華でありながら派手すぎない髪飾りで髪をまとめ、どうやって作るんだろうこんな服と思うほどフリフリヒラヒラが付いたドレスを身にまとい、歩きにくいのかスカートを軽く持ち上げる姿が絶妙に可愛らしい。顔にも軽くお化粧をしているようで、彼女の柔らかそうな頬が、チークの赤味でよりキュートに強調されていた。
私は、思わず尋ねた。
「あの、どなたですか?」
「何ボケとるニャ。僕ですニャ」
分かってる。
分かってはいたが、一応確認せずにはいられなかったのだ。
へえぇ……
これは、凄い。
馬子にも衣装というか、猫子にも衣装というか。
プロの着付けが凄いのが、思った以上にミャオの素材が良かったのか。
私はすっかり化けたミャオに、見とれていた。
「まあ、可愛い」
そう声をかけたのは、ハツネだった。
ミャオは、照れたようにはにかむ。
衣装が変わったせいなのか、借りてきた猫のように大人しい。
「綺麗なお姉さんに褒められたニャ。先生も、ボケッとしてないで、何か言ってニャ」
そう言って、上目遣いに、こちらを見る。
なんというか、どストレートに可愛くて、素直に褒めるのが照れくさい。
「あー、うん。いいんじゃない。なかなかいいわよ、うん」
「もう、なんですか、その褒め方。それじゃ、気持ちが伝わりませんよ? ほら、もっと心を込めて、ね?」
ハツネにからかうように言われ、なんだかますます照れてしまう。
でも、なかなか朗らかで、良い雰囲気だ。
さっきの不穏な空気が変わってよかった。
トットット。
おや、誰だろう。
こんなパーティー会場で、小走りに駆けている。
トットットット。
足音が、こちらに近づいてくる。
私とミャオ、ハツネは、そろって足音の主を見た。
それは、麗しい着物姿に、狐の仮面をかぶった女性だった。
走ってきたせいか、仮面の下で、んふーんふーと息を荒げている。
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