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第二部 獣人武闘祭

第303話(実況席)

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「シ、シルヴァさん。どうしてミス・マウンテンゴリラ選手は、技を解いちゃったんですか?」

「なんや、わからんのか?」

「わかりませんよ。あのまま締め上げれば、決まってたんじゃないですか?」

「まあ、そうかもな」

「ねえ、もったいぶらないで、どうして技を解いたのか教えてくださいよ」

「ふふふ……」

「……もしかして、シルヴァさんにもわからないんですか?」

「だ、だって、うち、プロレスは専門外やもん……」

「はぁー、つっかえない解説」

「や、やめてやそういうの、めっちゃ傷つく」

「なら、推測でもいいから理由を考えてくださいよ」

「う、うーん……客が沸くから、とか?」

「はぁ!? 真剣勝負で、そんなこと普通やらないでしょ!?」

「うん、うちもそう思う」

「もう、真剣に考えてください」

「うーん……『普通やらない』……かぁ……」

「えっ?」

「もしかしたらゴリラの姉ちゃん、『普通やらない』ことを、やろうとしとるんかもよ」



※※※※※【アニー視点】※※※※※



 鋭い蹴りが、俺の脇腹に突き刺さる。
 いてえと思う暇もなく、今度は左のほおっつらを殴り飛ばされた。

 凄いな。
 ちゃんとした、キックボクシングの動きだ。

 フォルスさん。
 あんた、こういうのは専門じゃないんだろう?

 あんたお得意の暗殺術なら、足首を立て、むき出しのナイフのような爪で、脇腹の向こうの臓器を直接抉るはずだ。指の間から死神の鎌そっくりの爪を飛び出させ、ほおっつらじゃなくて、首を切り裂いているはずだ。

 なあ。
 なんであんたみたいな人が、こういう大会に出たんだい?

 だんだん、あんたに興味が湧いてきたよ。

 俺は、フォルスに微笑みかける。
 その鼻づらに、またいいパンチが飛んできた。

 いてえ。

 お返しだ。
 俺は、フォルスの整った顔面に拳をぶち込む。

 いい感触だ。
 フォルスは、大きくのけぞった。

 フォルスは、鼻血を垂らしながら、ニヤリと笑う。

 俺たちは、互いにガードを捨てた。
 一発ずつ、交代交代に、互いの顔を殴り続けた。

 観客は、大喜びだ。

 楽しいね。

 なあ、フォルスさん。
 あんたも楽しいかい?

 俺、あんたのこと、好きになってきたよ。
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