二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第296話(ミャオ視点)

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 僕は、ずっと気になっていた。
 ネルロちゃんが首から下げている、変わったペンダントが。

 それは、親指ほどの大きさの、小さな小瓶のような形をしていた。

 いや、『小瓶のような』ではない。
 それは、ペンダント風に加工された、小瓶だった。
 こうして、じっくり見ると、分かる。

 小瓶は半透明になっていて、ほんのちょっぴりだけ、中身が透けて見えた。

 中身は、青色の液体だった。
 青色の液体は、かすかに揺らめいた。

「それ、何ニャ?」

「私の、ママ……」

 言ってる意味が、分からなかった。
 ネルロちゃんは、言葉を続ける。

「正確には、私のママの、ほんの一部」

「それって、もしかして……」

「うん。ママの体のほとんどは火炎魔法で蒸発しちゃったけど、ほんの……本当に、ほんのちょっぴりだけ、路地のブロックの隙間に、残ってたの。私はそれを拾って、この瓶に入れた……」

 ネルロちゃんは、愛おしそうに、小瓶の中の液体を眺めた。

「いろんな研究所を回って、お願いしたわ。このママの一部を培養して、増やして、合体させて、元のママに戻してって。パパには秘密でね……」

「どうして、秘密なのニャ?」

「だって、上手くいくか、確証がないもの……。もしも駄目だったら、ママを失う悲しみを、パパは二度も味わうことになる……そんなの、かわいそうだから……」

「ネルロちゃんは、パパのことが大好きニャね」

 ネルロちゃんの青白いほっぺが、ちょっぴり赤くなった気がした。

「どこの研究所に行っても、スライムの……モンスターの培養なんて冗談じゃないって断られたわ。そもそも、そんなこと技術的に不可能だって。でも、私は諦めなかった……毎年……毎年……新しい研究所を探して、お願いし続けた……」

「…………」

「それで、とうとう見つけたのが、最新の生命科学研究所……。そこの先生たちとお話しして、少しだけ希望が湧いたの。もしかして、この人たちなら、ママを生き返らせてくれるかもって。ただ、最新の設備や機材を使うだけあって、凄くお金がかかるらしいの……」

「それで、J1グランプリの賞金が欲しかったニャか」

 小さく、本当に小さく、ネルロちゃんは頷いた。

「でも、負けちゃったから、駄目になっちゃった……」

「ネルロちゃん……」

 なんて声をかければ良いのか、わからなかった。
 正々堂々の戦いだったとはいえ、僕はネルロちゃんの夢を潰したのだ。
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