二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第275話

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「ですが、私は、諦めていません。もう少し時はかかると思いますが、きっと父を説得してみせます。私が『少女』から『女』になるまでには、きっと……。ディーナ様、待っていて、くださいますか?」

 こんないじらしいことを言われて、断れる人間がいるだろうか。

 私は、静かに頷いた。……昨晩、アニーとあんなことがあってすぐに、別の少女にこういう態度を取る自分を、少し恥じた。

 脇腹に、ぐりぐりという感触。
 シルヴァが、ニヤニヤしながら私に肘をねじ込んでいた。

「シルヴァさん。痛いんですけど」

「くぅ~、たまらんな、ねーさん。『私が『少女』から『女』になるまでには、きっと……』って。うちもこんな『ろまんてぃっく』なこと、言われてみたいわ。ところで、ゾーダンクがどうたら、敵がどうたら言っとったけど、あんたら、もしかして凄い人なん?」

 私とカズネは、互いのいきさつを簡単に説明した。
 シルヴァは、コメディショーの芸人のように、派手にすっころんだ。

「かぁ~! マジか!? 勇者の仲間が務まるような武道家なんて、人間の格闘技者のなかで最強クラスやろ!? ほんで、こっちの嬢ちゃんは、あの格闘王ゾーダンクの娘かいな! こりゃ盆と正月がいっぺんにやって来たみたいやで!」

 そこまで言われると、さすがに照れる。
 カズネも恐縮し、頬を染めてうつむいた。

「そして、ここにはJ1グランプリ優勝者のうちもおる! あれやな、これは。一種の祭りやな。せっかくや、皆で記念写真とっとこ。ほら、もうちょい寄って寄って」

 シルヴァの勢いに押されるように、私たちは三人そろって写真を撮った。

 あれ、なんだっけ。
 今まで何の話してたんだっけ。

 ……そうそう。カズネがなぜここにいるかだったわね。
 私が話の続きを促すと、再びカズネは語りだした。

「私はディーナ様に敗北し、『柔よく剛を制す』の難しさを知りました。それで、まずは身体能力を徹底的に鍛え上げようと思っていたのですが、ありがたいことに、『覚醒』によって、私のパワーとスピードは飛躍的にアップしていました。見た目には、それほど筋肉がついているようには見えないのに……」

「それ、覚醒獣人の特徴らしいで。ゴツゴツムキムキじゃなくても、筋肉の質が変わるから、めっちゃ力出るらしいわ」
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