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第二部 獣人武闘祭

第269話

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 喫茶店を出るころには、午後二時を回っていた。
 タマラたちと別れた私は、再びウロウロと町を散策していた。

 正直に言うと、そろそろ宿に戻りたかったが、情けないことに、またミャオにどやされるのが怖かったのだ。なんだかんだ言って、この四か月間、仲良くやってきただけに、『話しかけんなニャ!』とまでに言われたのは割とショックだった。

 でも、あんなに怒ることないのになあ……

 私、これでも寂しがり屋だもん……

 久しぶりに、大好きだった人に会えてさ。
 それで、その、いい雰囲気になったらさ。
 ほら、ああいうことだって、あるわよ……

 しかし、こうして一人、わびしい気持ちで歩いていると、確かに怒られても仕方がなかったな、とも思う。……そうよね。平時ならともかく、試合を前にした大事な時期に、選手の心を乱すような真似をした私が悪いわ。

 やっぱり、今すぐ宿に戻って謝ろう。

 そう決心した私は、急ぎ、ミャオの元に向か……おうとしたのだが、あまりにもあてどなく歩いたために、現在地がどこなのか分からない。

 参ったなあ。
 案内板も、近くにないし。

 誰かに尋ねようにも、ここは人気のない町はずれ。
 通行人はゼロで、店もない。

 ほとほと困っていると、向こうから何人かの女性が歩いて来た。

 助かった。

 にこやかに声をかけ、道を尋ねようと思ったのだが、結局私は、彼女たちに話しかけることができなかった。全員が、ボロボロに傷を負っており、その表情が殺気立っていたからだ。

 女たちは、ぎろりと私を一瞥すると、足早に遠くへ行ってしまった。

 な、なんだったの、いったい……

 少し好奇心を刺激された私は、彼女たちのやって来た方角へ行ってみることにした。

 そこは、さびれた体育館だった。

 さびれているだけではなく、驚くほどに飾り気のない建物である。周囲にグラウンドのようなものもなく、一見すると何に使うのか分からない建物にも見える。

 なのになぜ、私が何の疑いもなく体育館だと思ったかと言うと、開け放たれたままの正門から、中で運動をしている人たちが見えたからだ。

 最初は、何人かでペアを組み、創作ダンスでもしているのかと思ったが、近づいてみると、そうでないことがすぐわかった。
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