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第二部 獣人武闘祭
第234話
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「先生がそう言うなら、そうしますニャ」
素直でよろしいことだ。
J1グランプリ予選では色々あったが、そのおかげで、短気で狂暴だった性格が、随分丸くなった気がする。これも、あのマリエールのおかげだ。私は、彼女のふわりとした髪の毛に似た桃色の茶菓子を食べながら、心の中で感謝の言葉を述べた。
コンコン。
ドアの外から、控えめなノックが聞こえた。
宿の主人だろうか。
「開いてますよ。どうぞ」
ガチャリと、ドアが開く。
幽霊が、入って来た。
それが私の感想だった。
隣のミャオは小さく悲鳴を上げて、私の腕にしがみついている。
どうやら、入ってきた人物を見て、私と同じ感想を持ったらしい。
病的に白い肌をした、恐ろしく背の高い、真っ黒な長い髪の女。
頭のてっぺんから毛先まで、てらてらとした粘着質の液体で濡れている。長すぎる前髪で、確認できる顔のパーツは唇だけだが、その唇は、うっすらと笑っているように見えた。
身に着けているのは、髪の毛と同じ、漆黒のワンピース。その布地のあちこちは、これまた髪の毛と同じく、粘液でしとどに濡れている。
彼女は、ぺと、ぺとという足音を立てて、こちらににじり寄って来た。
ミャオが絶叫を上げる。
「ぎにゃああああああああ!?」
いつも強気のミャオだが、幽霊は苦手らしい。
全身が固く縮こまっていて、まともに動くこともできないようだ。
私は、この幽霊と戦うべきか、逃げるべきか、悩んだ。
……って、ミャオを置いて、逃げるわけにはいかないでしょ。
となれば当然、戦うのみだ。
勇者パーティー時代に、亡霊系の魔物と戦った経験を活かし、拳に『聖女の結界』とは違う、『気』を込める。何の因果でこんなところに幽霊が現れたのか知らないけど、一撃で冥府に送り返してやるわ。
「コォッ!」
鋭く息を吐き、今まさに幽霊の頭を砕こうとした瞬間。
幽霊は恭しく頭を下げ、自己紹介を始めた。
「ふひ……ふひ……どうも……初めまして……私、隣の部屋の者です……ご挨拶に……参りました……」
「あっ、そうですか。これは、わざわざどうも」
つられて、私も頭を下げた。
ミャオはまだ怯えているが、どうやら、彼女は幽霊ではないらしい。いや、もしかしたら、隣の部屋の幽霊なのかもしれないが。
それにしても、なんで、こんなにビチャビチャなの?
間違って、川にでも落ちたのかしら?
素直でよろしいことだ。
J1グランプリ予選では色々あったが、そのおかげで、短気で狂暴だった性格が、随分丸くなった気がする。これも、あのマリエールのおかげだ。私は、彼女のふわりとした髪の毛に似た桃色の茶菓子を食べながら、心の中で感謝の言葉を述べた。
コンコン。
ドアの外から、控えめなノックが聞こえた。
宿の主人だろうか。
「開いてますよ。どうぞ」
ガチャリと、ドアが開く。
幽霊が、入って来た。
それが私の感想だった。
隣のミャオは小さく悲鳴を上げて、私の腕にしがみついている。
どうやら、入ってきた人物を見て、私と同じ感想を持ったらしい。
病的に白い肌をした、恐ろしく背の高い、真っ黒な長い髪の女。
頭のてっぺんから毛先まで、てらてらとした粘着質の液体で濡れている。長すぎる前髪で、確認できる顔のパーツは唇だけだが、その唇は、うっすらと笑っているように見えた。
身に着けているのは、髪の毛と同じ、漆黒のワンピース。その布地のあちこちは、これまた髪の毛と同じく、粘液でしとどに濡れている。
彼女は、ぺと、ぺとという足音を立てて、こちらににじり寄って来た。
ミャオが絶叫を上げる。
「ぎにゃああああああああ!?」
いつも強気のミャオだが、幽霊は苦手らしい。
全身が固く縮こまっていて、まともに動くこともできないようだ。
私は、この幽霊と戦うべきか、逃げるべきか、悩んだ。
……って、ミャオを置いて、逃げるわけにはいかないでしょ。
となれば当然、戦うのみだ。
勇者パーティー時代に、亡霊系の魔物と戦った経験を活かし、拳に『聖女の結界』とは違う、『気』を込める。何の因果でこんなところに幽霊が現れたのか知らないけど、一撃で冥府に送り返してやるわ。
「コォッ!」
鋭く息を吐き、今まさに幽霊の頭を砕こうとした瞬間。
幽霊は恭しく頭を下げ、自己紹介を始めた。
「ふひ……ふひ……どうも……初めまして……私、隣の部屋の者です……ご挨拶に……参りました……」
「あっ、そうですか。これは、わざわざどうも」
つられて、私も頭を下げた。
ミャオはまだ怯えているが、どうやら、彼女は幽霊ではないらしい。いや、もしかしたら、隣の部屋の幽霊なのかもしれないが。
それにしても、なんで、こんなにビチャビチャなの?
間違って、川にでも落ちたのかしら?
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