二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第222話(ミャオ視点)

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「ミャオ! 今よっ! 勝つチャンスは今しかないわっ! 一番練習した『あれ』をやりなさいっ!」

 半べそをかきながらまっちゃんの攻撃を防ぎ続ける僕の耳に、先生の声が聞こえた。……『あれ』? 『あれ』ってなんニャ?

 だいたい、勝つチャンスなんて、本当にあるニャ?
 僕はもう、マウントポジションもひっくり返された、こんな状態……あっ。

 僕は、ハッとした。マウントポジションがひっくり返ったってことは、ええっと、この体勢、なんていったっけ? ……そうそう、ガードポジションニャ。

 一見、さっきとまったく逆に、まっちゃんが僕に対してマウントポジションを取っているように見えるけど、まっちゃんの腰には、僕の両足が引っかかっている。

 この体勢で、できること。
 僕が寝技で、一番練習したこと。
 頭の中に、あの小憎らしい雌犬の顔が浮かんだ。

 そうニャ。
 僕は、あの雌犬に、一瞬で絞め落とされたのが悔しくって、先生に習ったニャ。

 あいつと同じ技を。

 僕は自分を鼓舞するように咆哮をあげると、最後の力を振り絞って、飛んできたまっちゃんの左パンチを両腕でつかまえる。さすがのまっちゃんも、下からの連打で相当に疲れているみたいで、閃光のようだったパンチのスピードがかなり落ちていた。

 僕はそのまま、ぐいっとまっちゃんの腕を引きながら、左足をまっちゃんの肩越しに上げ、フックさせて後頭部に叩きつけるようにする。と言っても、踵を当てて倒そうとしているのではない。こんな体勢では、有効打にならないからだ。

 そして、フックした左足にすかさず右足を絡める。すると、僕の両足が、まっちゃんの左肩ごと首に巻きついているような形になった。これこそが、先生の叫んだ『あれ』の正体。

 準備は完了。後は、満身の力を込めるだけ。僕は、僕の内腿と、まっちゃん自身の肩を使って、思いっきりまっちゃんの首を絞め上げる。

 まっちゃんの顔が、驚愕に歪んだ。

 どうニャ。ネコカラテの試合じゃ、こんな技、食らったことニャいでしょ? 僕も初めて食らったときは、こんなヘンテコな技で意識を失うなんて、信じられなかったニャ。

 三角絞め――

 確か、そんな名前だったニャ。

 まっちゃんは歯を食いしばるようにして、耐えていた。
 しかし、完全に首が絞まっているのニャ。
 もう精神力や忍耐力で、どうにかできる状況ではない。

 数秒後、まっちゃんは、意識を失った。

 僕は、技を解く。
 まっちゃんは、くてんと倒れた。
 すべての力を出しつくした僕も、その場に倒れ込む。

 僕とまっちゃんは、しばらくの間、肩を並べて、試合場の上に寝転んでいた。
 その有様は、どちらが勝者か分からないくらいだった。

 でも、僕は立ち上がったニャ。
 勝ち名乗りを受けるために。

 疲れ切り、朦朧とする耳に、審判の声がぼんやりと聞こえた。

「勝負あり! 勝者、エントリーナンバー146番! ミャオさんっ!」
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