二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第205話(ミャオ視点)

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「まあ、いいですけど。それより、今回のことに懲りたら、礼儀礼節は大切にするのですよ。あなたが横柄な態度を取らなければ、係員の人だって、あんなにかたくなにはならなかったはずですわ」

「ははーっ、よく肝に銘じておきますニャ」

 僕は地面に平伏してまっちゃんを礼讃すると、そのまま方向を変え、他の選手たちにも頭を下げた。

「皆様には大変不快な思いをさせて申し訳ありませんでしたニャ……この通りですニャ……」

 それから、最後に係員の方を向き、深々と頭を下げる。

「生意気な態度を取ったことを許してほしいニャ……これからは道の端っこを、背を丸くして歩くニャ。ですから、どうか、どうか、お許しくださいニャ……」

「も、もういいから、早くやりなさい。きみのせいでかなり時間が押してるんだから」

「はーいニャ」

 僕は元気に立ち上がると、コキコキと首を鳴らす。

 もう、万が一にも失敗するわけにはいかないので、大技はやめニャ。そもそも、まっちゃんの蹴りを見たことで動揺し、派手な技を使おうとしたことが、間違いの始まりだったのニャ。

 まっちゃんと、優しい皆のおかげでかろうじて繋がった、J1グランプリ本戦への道。今度は絶対に、踏み外したりしない。必ず渡りきってみせる。この足で。

 静かに『タエ・シノブくん』の前に行くと、一度だけ、深呼吸する。
 集中し、体に力を溜め、そのエネルギーを一瞬で爆発させた。

「シャッ!」

 鋭く息を吐く音と共に、僕の右足は地面から跳ね上がった。

 上段回し蹴り。

 先程のまっちゃんの蹴りとほとんど同じ軌道を描き、空気を切り裂くようにして『タエ・シノブくん』の側頭部に激突する。

 足全体に、強烈な手ごたえ(この場合、足ごたえというべきかニャ)が伝わってくる。

 バキッ。

 何かが折れる、乾いた音がした。

 折れたのは、僕の足じゃない。
『タエ・シノブくん』の首だった。

 観客席から、小さな悲鳴が聞こえる。

『タエ・シノブくん』は力なく膝から崩れ落ち、首の皮一枚だけ繋がったまま、ぶらりと垂れ下がった頭で、律儀にも最後の言葉を述べた。

「タ、タタ、タ、タ、タダイマノ……コウ、ゲキ、2260ポイント、デ……ス……」

 係員も、他の選手も、まっちゃんさえも、驚きに目を見開き、あんぐりと口を開けていた。僕は湧き上がる喜びと興奮から、知性の欠片もない獣の咆哮をあげた。
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