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第二部 獣人武闘祭
第165話
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「J1のJは獣人(JYUUJIN)の頭文字ニャ。一年に一度、世界各地から腕に覚えのある獣人格闘家たちが集まり、その中で最強は誰かを決める熱い武闘の祭典ニャ」
「へえ、そんなのがあるの。知らなかったわ」
「獣人たちの迫力ある戦いを見るために、最近は観客として来る人間も多いニャ」
「で、あなたはそれに選手として出たいと」
「はいですニャ。子供の頃から積んできた、ネコカラテの厳しい修行の成果を、今こそ見せる時なのニャ」
ネコカラテ……
これまた聞いたことのない言葉だが、推察するに獣人の武道の流派か何かだろう。
なるほど、これで先程の見事な蹴りの謎が解けた。いくら身体能力の高い獣人とはいえ、何の訓練もしていない者が、あれほどの蹴りを放つのは不可能だ。実際に肌を合わせた感覚からして、ミャオのネコカラテとやらは、かなりのレベルに達していると私は思った。
「それにしても、お姉さん、いったい何者ニャ? 大怪我させないように加減したとはいえ、僕の蹴りを軽々と防いで、おまけに凄い投げ技で、一撃で僕を倒しちゃうニャんて、さぞかし名のある武芸者に違いないニャ。お名前を聞かせてくださいニャ」
そう言って慇懃に頭を下げるミャオの所作は実に可愛らしかった。
私は簡潔に自己紹介する。
「私の名はディーナよ」
「ディーナさんニャね。お仕事は何をされてますニャ?」
「えっ」
ハッキリ言えば、今は無職だが、なんとなく『無職です』と言うのがつらかったので、私は適当に言葉を濁した。
「えっと……まあ……その……旅の武道家……?」
「なんで疑問形なのニャ。もったいぶってないで、何をしてるのか教えてほしいニャ」
「うーん……何をしてるっていうか……その……今は何もしてないというか……まあ、これでも昔は、勇者パーティーの一員だったこともあるんだけど……」
ごにょごにょと、歯切れ悪く言った言葉だったが、思いのほかミャオの尊敬を得ることができたらしく、彼女はキラキラと目を輝かせて私を見つめている。
「勇者パーティーの一員だったってことは、人間の中でも最強クラスの実力があるってことニャね。ディーナさんはやっぱり凄い人だったニャ。そんな凄い人とお話しできて大変光栄ですニャ」
「いやあ、そんな……」
「へえ、そんなのがあるの。知らなかったわ」
「獣人たちの迫力ある戦いを見るために、最近は観客として来る人間も多いニャ」
「で、あなたはそれに選手として出たいと」
「はいですニャ。子供の頃から積んできた、ネコカラテの厳しい修行の成果を、今こそ見せる時なのニャ」
ネコカラテ……
これまた聞いたことのない言葉だが、推察するに獣人の武道の流派か何かだろう。
なるほど、これで先程の見事な蹴りの謎が解けた。いくら身体能力の高い獣人とはいえ、何の訓練もしていない者が、あれほどの蹴りを放つのは不可能だ。実際に肌を合わせた感覚からして、ミャオのネコカラテとやらは、かなりのレベルに達していると私は思った。
「それにしても、お姉さん、いったい何者ニャ? 大怪我させないように加減したとはいえ、僕の蹴りを軽々と防いで、おまけに凄い投げ技で、一撃で僕を倒しちゃうニャんて、さぞかし名のある武芸者に違いないニャ。お名前を聞かせてくださいニャ」
そう言って慇懃に頭を下げるミャオの所作は実に可愛らしかった。
私は簡潔に自己紹介する。
「私の名はディーナよ」
「ディーナさんニャね。お仕事は何をされてますニャ?」
「えっ」
ハッキリ言えば、今は無職だが、なんとなく『無職です』と言うのがつらかったので、私は適当に言葉を濁した。
「えっと……まあ……その……旅の武道家……?」
「なんで疑問形なのニャ。もったいぶってないで、何をしてるのか教えてほしいニャ」
「うーん……何をしてるっていうか……その……今は何もしてないというか……まあ、これでも昔は、勇者パーティーの一員だったこともあるんだけど……」
ごにょごにょと、歯切れ悪く言った言葉だったが、思いのほかミャオの尊敬を得ることができたらしく、彼女はキラキラと目を輝かせて私を見つめている。
「勇者パーティーの一員だったってことは、人間の中でも最強クラスの実力があるってことニャね。ディーナさんはやっぱり凄い人だったニャ。そんな凄い人とお話しできて大変光栄ですニャ」
「いやあ、そんな……」
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