二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第158話

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 そして、エリスの旅は終わった。
 私は昨日、ユーゲンスの埋葬が終わった後、エリスにこう尋ねた。

「あなた、これからどうするつもりなの?」

 激しい死闘の影響か、それとも、自らの手で祖父の命を奪った心労のせいか、エリスは少しだけやつれた様子で、力なく微笑み、滔々と語ってくれた。

「まだ、何も考えていません。これまで、義父の仇を見つけ出し、絶対に倒すという執念だけで、心の中がいっぱいでしたから、仇を討ち果たした後のことなんて、考えたこともありませんでした。……これから一年間、喪に服す中で、ゆっくり考えてみたいと思います」

「そう……」

「お師匠様。一年間経って、また、どこかで会えたら、私のことを、もう一度弟子にしてくれますか?」

 私はエリスのおでこをツンと押し、答えた。

「当然でしょ」

 そして私たちは、抱擁し、別れたのである。
 いつか、どこかで再会できることを願って。

 もう一度言う。
 エリスの旅は、終わった。

 エリスの旅に付き添う形であった私の旅も、ひとまずは終わったことになる。
 私もエリスと同じように、これからのことは何も考えていない。

 でも、しばらくは旅を続けてみようと思う。

 かつて、思いがけないトラブルからエリスという『友』に出会えたように、旅を続けていれば、また、新たな『友』との出会いがあるかもしれないからだ。

 そんなことを思いながら歩き続けるうち、広い街道は徐々に狭まり、随分と寂しい道になった。左右には、大人でも楽々身を隠せそうなほど深い茂みがあり、その茂みは、時折ゴソゴソと妙な音を立てている。

 そして、次の瞬間。
 茂みから、粗野な身なりをした男たちが、続々と現れた。

 顔には、いくつもの傷。
 体には、おどろおどろしいタトゥー。

 どう見ても、堅気の人間ではない。
 恐らく、盗賊だろう。

 残念ながら、エリスと別れて初めての出会いは、『友』ではなく『敵』のようだ。……まあ、それならそれでいい。『友』のいない人生は寂しいが、『敵』のいない人生も、つまらないからね。

 盗賊の人数は、6人。

 一人旅の女を襲うには、充分な人数だ。
 ……ターゲットが『普通の女』ならね。

「へっへっへ、お嬢さぁん。こぉんな寂しいところを、女が一人で歩くのは危ないよぉ。俺たちみたいなのが出るからねぇ。へっ、へへっ、へへへへへ」
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