二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第153話

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 そしてエリスは、自ら戦いを開始した。
 それに応戦する形で、ユーゲンスも動き始める。

 エリスの動きの素早さは充分に知っているが、ユーゲンスの動きも、見事だった。『魔闘身』で体を強化しているのだろうが、とても、老人の動きとは思えない。

 戦ううちに、二人の動きは、より鋭く、洗練されていく。
 死を望むだけであったユーゲンスの顔にも、生気が戻っていく。

 やはり、彼は生粋の闘士だ。戦うことでしか、自分の存在と、生きる意味を実感できないのだろう。だから、息子であるノッドル氏に対しても、歪んだ形でしか、思いを伝えることができなかったのかもしれない。

 三分ほど戦いは続き、エリスとユーゲンスは、いったん距離を取る。

 ボクシングで言えば、ちょうど1ラウンド経過しただけだが、軽く汗ばんでいる程度のエリスに比べて、ユーゲンスは肩で大きく息をして、疲労困憊だ。やはり、年齢のハンディは、いかんともしがたい。

 しかし、ユーゲンスは嬉しそうだった。
 彼は、生き生きとした笑顔で、荒い呼吸と共に言葉を吐き出していく。

「はぁ、はぁ、見事だ、エリス。本当に、強くなったな。確かに、あの頃のノッドルよりも、素早く、鋭く、そして、力強い動きだ。これなら本当に、我がルセイン家の『秘拳』をしのぎ、学習することができるかもしれん……」

 そこで一度言葉を切り、ユーゲンスは私を見た。
 そして、小さく頭を下げ、言う。

「ディーナ様、まことに図々しいと思いますが、お願いがあります。……ワシは今から、『秘拳』を使います。それで、もし、エリスの命に危険が及ぶようでしたら、あなたの手で、ワシを殺してほしいのです」

 私は、頷いた。ユーゲンスは「ありがとうございます」と言い、深々と頭を下げ、エリスに向き直る。そして、自らの魔力を、爆発的に高め始めた。ユーゲンスの小さな体すべてが、『魔拳』のごとき、アクアブルーのオーラに包まれる。

 まるで、青い炎で、ユーゲンスの全身が焼かれているようだ。

 ユーゲンスは、オーラの影響で青く逆立った白髪を揺らめかせながら、エリスに言う。

「これが、我がルセイン家の『秘拳』……『蒼炎』だ。全身の魔力と闘気を高めた後、それらを融合・燃焼させることで、使用者の戦闘能力を段違いに向上させる秘術よ。分類的には『魔闘身』と同じ身体強化術だが、その効果は比較にもならん。『蒼炎』による戦闘能力の向上は、平常時の10倍以上だからな」
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