二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第151話

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「そういうものか」

「そういうものです」

 しばしの沈黙の後、ユーゲンスは滔々と語り始めた。

「……殺す気は、無かった。ワシはただ、ワシの苦悩を分かろうともしないノッドルを、叩きのめしてやりたかったのだ。しかしノッドルは、年老いたワシより、ずっと強かった。奴は、かつては最強のチャンピオンであったワシに対して、手加減する余裕すら見せた。その時ワシは、自らの衰えを心の底から知り、気が狂いそうだった」

「…………」

「武術とは、虚しいものだ。どれほど鍛えても、老いと共に、技も力も弱っていく。作り話に出てくるような、天下無双の老人など、実際には存在しない。それは、長命のエルフ族でも同じこと。その事実が、ワシの心を蝕み、必殺の『秘拳』を使うことを決意させた。……『秘拳』を使えば、ノッドルが死ぬ可能性があると分かっていながら」

「…………」

「もう一度言うが、殺す気はなかった。しかしワシは、ノッドルが死ぬ危険性があると知りつつも『秘拳』を使った。……これは、いわゆる『未必の故意』だ。そして、ノッドルは死んだ。ノッドル自身も『秘拳』を使えば、ワシに後れを取ることはなかっただろうに、奴は『秘拳』を使わなかった。エリス、何故か分かるか?」

「……お義父さんは、その『秘拳』を使うことで、お爺ちゃんを殺してしまうかもしれないと思い、使用をためらったんだと思います」

「そうだ。ノッドルは、自らの命が危ないというのに、ワシの身を案じていたのだよ。……ワシは、力、技、そして、心。すべてにおいて、息子に敗北したのだ。そして、息子を殺した後、孫たちになじられるのを恐れ、知らぬ存ぜぬを貫くことにした。結果、お前がノッドルの無残な遺骸を最初に発見し、深い復讐心を抱くことになったのは、因果だな」

「…………」

「時間がたつほどに、ワシは、自分のしでかしたことの愚かさと罪深さに、おののいた。しかしそれでも、誰にも罪を告白しなかった。何もかもを隠し、玉遊びに興じて、自分の罪と惨めさを、忘れようとした……」

「…………」

「さあ、惨めな年寄りの話を聞くのは、もう充分だろう。明確ではないものの、ワシにはノッドルに対する殺意があったのだ。ワシには、お前に好いてもらう資格などない。『血の掟』に従い、ワシを殺してくれ……」
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