二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第70話

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「冒険者ギルドは、ゴブリン討伐を、都合のいい実技試験にしているんですよ。討伐依頼が来るようなゴブリンの集団をやっつけに出かけた際は、いま目にしているように、かなりの高確率で惨い死体に遭遇します。そこで逃げ帰ってこないかで、まず『異常な事態に対する耐性』を測ることができます」

「ふーむ……」

「そして、実際にゴブリンと戦い、奴らを倒すことができれば、それなりの実戦能力があることもわかります。つまり、冒険者ギルドは、ほとんど役に立っていない資格試験の代わりに、駆け出し冒険者にゴブリン討伐をさせることで、冒険者たちをふるいにかけているんです。『実力者が生き残り、適性のない者は死ぬ』という形で」

「ちょっと待ってよ。そこまでするなら、もう少しちゃんとした実技試験をおこなって、適性のない人は落としたらいいじゃない。いくらなんでも、適性がないだけでゴブリンに殺されなきゃいけないなんて、酷すぎるわ。なんで冒険者ギルドは、そこらへん、しっかりやらないの?」

 私の問いを受け、エリスはしばし目を閉じる。
 それから、ぱちりとまぶたを開き、静かに言葉を発した。

「その理由は……」

「その理由は?」

「面倒くさいうえに、人手がかかりすぎるからだそうです」

「えぇ……」

「単純な筆記試験や戦闘試験と違い、実地研修も含んた詳細な実技試験は、おこなうのにとてつもない資金とマンパワーが必要だから、まったくやる気はないと、冒険者ギルドの人は言っていました……」

「…………」

「そんなことをしなくても、次から次から冒険者志望者はやって来るので、彼らから試験料を徴収し、適性のない者はゴブリン退治でいなくなってくれれば、冒険者ギルドは潤い、ギルド所属の冒険者の質も、一定のレベルに保ち続けることができる。だから、今の形が一番良いと思っているみたいです」

「冒険者志望の、夢見る若者がたくさん死んでも?」

「冒険者ギルドの人は、こうも言っていました。……『夢を見るのは自由だが、叶えるにはそれなりの能力と適性がいる。最初に適性を知るチャンスを与えてやってるだけ、俺たちは優しいよ。だいたい、自分には無理だと思ったら、気張らずに逃げればいい。そうせずに、意地を張って死ぬのは、そいつが身の程知らずの間抜けだからさ』と」

 うーん……
 そう言われると、まあ、そうなのかもしれないけど……

 私は、小さなため息を漏らしてから、呟く。

「冒険者ギルドにも、冒険者ギルドなりの理屈と事情があるんだろうけど、人間って、残酷ね」

「そうですね……冒険者ギルドの方は、人の生き死にに関して、特にドライな人が多いですから。でも、良いところもあるんですよ」

「ふうん、どんな?」

「徹底した実力主義で、種族や性別による差別を、一切おこなわないことです。噂によると、おおっぴらに正体を明かさなければ、魔物でも冒険者になることができるそうですよ」
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