二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第66話

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 エリスも喜んでるみたいだし、別にこのまま、ダメ人間のままでもいいか……

 私もこれまでの人生……けっこう張り詰めて生きてきたほうだと思うし、少しくらい甘えた生き方をしたって、バチは当たらないわよね……あぁ~……マッサージ気持ちいい~……お酒も美味しい~……堕落最高~……

 って、駄目よ駄目駄目。ここで甘ったれた自分を許してしまったら、もう人として、際限なく落ちて行ってしまう気がする。……それにしても、『もっとちゃんとしないと』と言ったばかりなのに、すぐさま堕落しそうになるとは。どうやら私は、甘やかしてくれる人がそばにいると、あっという間に駄目になってしまうタイプらしい。

 こうなったら、自分で自分を厳しく扱うしかない。
 甘ったれてしまった心のリハビリをするのよ。

 そのために最も有効なのは、『働くこと』だ。
 何でも人に世話をさせる甘ったれには、労働が一番の薬だもんね。

 私は、エリスにマッサージをやめさせ、決意を込めて言う。

「エリス、確か明日も、冒険者ギルドの依頼を片付けに行くのよね? 私も同行させてもらっていいかしら? 私、冒険者の仕事ってよく分からないけど、戦闘系の依頼なら、多少は役に立てると思うんだけど……」

 エリスは母性溢れる笑顔を浮かべ、首を左右に振った。

「いえいえそんな、冒険者ギルドの依頼は、けっこう汚れることもありますし、お師匠様ほどの方がわざわざ同行するようなものではありません。お気持ちだけいただいておきます」

「で、でも……」

「お師匠様はいつも通り、私が戻るまで、カフェかエステで優雅な時間を過ごしていてください。はい、これ、明日の分のお小遣いです」

「わ~い、やった~、お小遣いもらっちゃった~……って、やめて! これ以上私を甘やかさないで! と、とにかく、明日は絶対、私も同行するからね!」

「は、はぁ……わかりました……」





 そして翌日。

 私は半ば無理やりついて行くような形で、エリスに同行した。

 甘ったれた根性を叩きなおすため、必要以上に気合を入れ、肩を怒らせて歩く私。そんな私に、困ったような笑みを向け、エリスは言う。

「お師匠様。くどいようですが、今回の依頼は、お師匠様ほどの方が関わるようなものでは……」

 その言葉を遮るように、私はキャンキャンと吠える。

「いや、行く! 何と言われようと帰らない! 絶対行くからね!」

「わ、わかりました。でも、ただのゴブリン退治ですから、一緒に行ってもつまらないと思いますよ?」

「へえ、ゴブリン退治。それって、言うまでもないけど戦闘系の依頼よね。それならなおさら、あなた一人より、私と二人の方が安全で確実じゃない」
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