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第65話
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旅というものは、あまり贅沢をしなくても、それなりに宿代・食事代が必要なのだが、私の所持金は、少しも減ることがなかった。
……何故かと言うと、エリスがいつも『ここは私が払います』『支払いは、私にお任せください』『お師匠様に、お金を払わせるわけにはいきません』と言い、すべての会計を済ませてくれるからだ。
もちろん、エリスも富豪ではないので、無限にお金があるわけではないのだが、実はエリスは正式な『冒険者資格』を持っており、旅の合間合間に冒険者ギルドに立ち寄っては、何らかの依頼を受け、きっちり旅費を稼いでくるのである。
エリスは以前、自分のことを『社会不適合者』だと卑下していたが、ちゃんと社会のルールに従ってお金を手に入れ、私の分まで旅費を稼いできてくれるのだから、全然まともである。いや、ほんとに、尊敬するわ。
それに比べて私は……
私は……
かなりのダメ人間になりつつあった。
この一ヶ月、エリスの好意と厚意に甘えっぱなしで、なんて言うか、『自分一人で生き抜いていく』という気概が、すっかりなくなってしまったのである。
今夜も、エリスのお金で泊まった宿の一室にて、私はベッドに横になりながら、エリスのお金で買ったお酒を飲み、エリスのお金で買ったおつまみを食べ、ダラダラと過ごしている。しかも、エリスに足のマッサージをさせながらだ。
エリスは手先が器用で、背中を流すのが上手いのはすでにご承知の通りだが、マッサージはもっと上手い。絶妙な力加減でふくらはぎを揉まれ、私はうっとりとした声を漏らす。
「あぁ~、そこそこ、いい感じ。左足も、そんな感じでお願いね~」
「はぁい。こんな感じでしょうか?」
「ん~、そうそうそう~、上手よ~、ああ~、余は満足じゃ~」
そこで私は、はたと正気に返った。
何やってるの私!
何が『余は満足じゃ~』よ!
これじゃ私、エリスにたかってるヒモみたいじゃないの!
自分を客観視することで、いきなり冷静になった私は、これまでの態度を大いに恥じた。私は自分の頬をピシャリと叩くと、ぶんぶん頭を振って酔いを醒まし、エリスに謝罪する。
「ごめんなさい、エリス。私、どうかしてたわ。あなたがあまりにも甲斐甲斐しく尽くしてくれるから、それに頼り切っちゃって、完全に堕落してた。もっとちゃんとしないと」
突然謝りだした私を、エリスは不思議そうな顔で見つめ、マッサージを続けながら言う。
「どうして謝るんですか? 弟子が師に尽くすのは当たり前ですし、私はお師匠様に頼ってもらえて、とても嬉しいです」
こやつめ。
なかなか可愛いことを言いおる。
……何故かと言うと、エリスがいつも『ここは私が払います』『支払いは、私にお任せください』『お師匠様に、お金を払わせるわけにはいきません』と言い、すべての会計を済ませてくれるからだ。
もちろん、エリスも富豪ではないので、無限にお金があるわけではないのだが、実はエリスは正式な『冒険者資格』を持っており、旅の合間合間に冒険者ギルドに立ち寄っては、何らかの依頼を受け、きっちり旅費を稼いでくるのである。
エリスは以前、自分のことを『社会不適合者』だと卑下していたが、ちゃんと社会のルールに従ってお金を手に入れ、私の分まで旅費を稼いできてくれるのだから、全然まともである。いや、ほんとに、尊敬するわ。
それに比べて私は……
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かなりのダメ人間になりつつあった。
この一ヶ月、エリスの好意と厚意に甘えっぱなしで、なんて言うか、『自分一人で生き抜いていく』という気概が、すっかりなくなってしまったのである。
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「あぁ~、そこそこ、いい感じ。左足も、そんな感じでお願いね~」
「はぁい。こんな感じでしょうか?」
「ん~、そうそうそう~、上手よ~、ああ~、余は満足じゃ~」
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「どうして謝るんですか? 弟子が師に尽くすのは当たり前ですし、私はお師匠様に頼ってもらえて、とても嬉しいです」
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