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第55話
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「だから、なんで勇者は、魔物と戦わなければならないの?」
「なんでも何もあるか、勇者とはそういうものだ」
うーん……
なんか、これ以上聞いても、まともな答えは返って来そうにないわね。
私は少しだけ、質問を変えることにした。
「あなた、何故魔物と人間が争うのか、知ってる? そもそも、先に戦いを仕掛けたのは、どっちなの?」
ラジアスは、迷いのない瞳で答える。
「そんなこと、知る必要はないし、知る意味もない。今現在、人間と魔物は争っている。そして、どちらかが滅びなければならない。戦う理由など、それで充分だ」
「人間から見ても、尊敬できる魔物だっているのに?」
私の脳裏に、かつて魔王軍の将の副官であった、あの魔物のお坊さんの顔が、かすかに去来した。ラジアスは、心底訝しげな顔で私を見て、まるでこちらを気遣うように問う。
「おい、さっきから、いったいどうしたんだ? 散々魔物を殺してきた聖女ディーナとは思えない発言だぞ」
「……そうね。でも、今の私は、昔の私とは違うのよ」
「そうらしいな。少しガッカリした。俺は、お前の強さと、魔物に対する冷徹さに関してだけは敬意を抱いていたのに。どうやら、しばらくパーティーから離れていたことで、さすがの聖女ディーナ様も、少々腑抜けてしまったらしい」
むかっ。
ああもうっ。
ほんっとうに、口の悪い男ね!
「何よ、その言い方。まったく、あなたって、憎まれ口を交えないと、人と話ができないわけ?」
「悪いが、こういう性分でね」
「嫌な性分ですこと。ほんっと、いけ好かない男。あなたとは一生、分かり合えそうにないわ」
「ふん、俺だって、お前に好かれたいとは思わないし、分かり合いたいとも思わない。……だが、お前の力は絶対に必要だ。だから俺は、今ここで、お前に果し合いを申しこむ。俺が勝ったら、もう一度仲間になってもらうぞ。よもや、嫌とは言うまいな?」
「はぁ? なんでいきなり、そういうことになるのよ? 『嫌とは言うまいな』ですって? こちらにとって、何の得にもならないそんな果し合い、私が受けるとでも思ってるの?」
「思ってるさ。俺はお前のことが好きじゃないが、お前の性格は、誰よりもよく分かっている。お前は根っからの武人だ。くだらないトラブルや、明らかな誤解が原因の喧嘩ならともかく、実力のある相手に正面切って果し合いを申し込まれたら、決して逃げはしない。そうだろう?」
「うっ……」
ラジアスに内心を見透かされるのは悔しかったが、その通りだった。
私は、正々堂々の果し合いから逃げたことは一度もない。死闘に背を向けないのは私の誇りであり、何より、武人として、真剣に戦いを挑んでくる人間の気持ちには応えなければならないと思っているからだ。
「なんでも何もあるか、勇者とはそういうものだ」
うーん……
なんか、これ以上聞いても、まともな答えは返って来そうにないわね。
私は少しだけ、質問を変えることにした。
「あなた、何故魔物と人間が争うのか、知ってる? そもそも、先に戦いを仕掛けたのは、どっちなの?」
ラジアスは、迷いのない瞳で答える。
「そんなこと、知る必要はないし、知る意味もない。今現在、人間と魔物は争っている。そして、どちらかが滅びなければならない。戦う理由など、それで充分だ」
「人間から見ても、尊敬できる魔物だっているのに?」
私の脳裏に、かつて魔王軍の将の副官であった、あの魔物のお坊さんの顔が、かすかに去来した。ラジアスは、心底訝しげな顔で私を見て、まるでこちらを気遣うように問う。
「おい、さっきから、いったいどうしたんだ? 散々魔物を殺してきた聖女ディーナとは思えない発言だぞ」
「……そうね。でも、今の私は、昔の私とは違うのよ」
「そうらしいな。少しガッカリした。俺は、お前の強さと、魔物に対する冷徹さに関してだけは敬意を抱いていたのに。どうやら、しばらくパーティーから離れていたことで、さすがの聖女ディーナ様も、少々腑抜けてしまったらしい」
むかっ。
ああもうっ。
ほんっとうに、口の悪い男ね!
「何よ、その言い方。まったく、あなたって、憎まれ口を交えないと、人と話ができないわけ?」
「悪いが、こういう性分でね」
「嫌な性分ですこと。ほんっと、いけ好かない男。あなたとは一生、分かり合えそうにないわ」
「ふん、俺だって、お前に好かれたいとは思わないし、分かり合いたいとも思わない。……だが、お前の力は絶対に必要だ。だから俺は、今ここで、お前に果し合いを申しこむ。俺が勝ったら、もう一度仲間になってもらうぞ。よもや、嫌とは言うまいな?」
「はぁ? なんでいきなり、そういうことになるのよ? 『嫌とは言うまいな』ですって? こちらにとって、何の得にもならないそんな果し合い、私が受けるとでも思ってるの?」
「思ってるさ。俺はお前のことが好きじゃないが、お前の性格は、誰よりもよく分かっている。お前は根っからの武人だ。くだらないトラブルや、明らかな誤解が原因の喧嘩ならともかく、実力のある相手に正面切って果し合いを申し込まれたら、決して逃げはしない。そうだろう?」
「うっ……」
ラジアスに内心を見透かされるのは悔しかったが、その通りだった。
私は、正々堂々の果し合いから逃げたことは一度もない。死闘に背を向けないのは私の誇りであり、何より、武人として、真剣に戦いを挑んでくる人間の気持ちには応えなければならないと思っているからだ。
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