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第50話
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だが、そんな弟の言葉に、兄が激怒した。
「てめぇ……今更何言ってやがる。てめぇがそんなんだと、兄貴の俺まで舐められちまうだろうがぁ!」
兄は、狂気の笑みを弟に向け、それと同時に、弟の顔面に拳を叩き込んだ。
その、たった一撃で、弟の顔面は、鼻のあたりから陥没した。
潰れた鼻から、鮮血が飛び散る。弟は、悲鳴を上げることすらできず、溢れた血の中でおぼれるように、「ゴボゴボ」とくぐもった呻きを漏らしていた。
兄は弟の返り血を浴びながら、拳を振りかぶり、叫んだ。
「もうてめぇの問題じゃねぇんだよ、このアホが! 俺のメンツの問題なんだよ! そんなこともわからねぇのか! 低能のクソボケがぁ!」
そう言って、陥没した弟の顔面に、さらに拳を叩き込もうとする兄。
だが、それは未遂に終わった。
エリスが弟を助けようとするみたいに、兄に飛びかかったからだ。
兄はエリスの動きを敏感に察知し、弟を放り捨て、距離を取った。
そして、どこか自慢げに、上ずった声で言う。
「おい、クソエルフ。そう何度も不意打ちが決まると思ってんのか? あめぇんだよ、アホが」
この男、段々と言動が汚くなってきた。先程までの、飄々とした物言いは上辺だけのものであり、こっちが素なのだろう。そんな、本性を見せた男に対し、エリスはなおも変わらず、落ち着いた様子で言葉を返す。
「今のは、不意打ちをしたんじゃありません。あなたの攻撃をやめさせ、この人を助けるために飛びかかったんです」
エリスは、自らの衣服が血で汚れるのも気にせず、もはや瀕死の状態で痙攣を続けている弟を抱き起こすと、懐から『エルフの秘薬』を取り出し、一滴、飲ませてあげた。
すると、七色の輝きと共に、陥没した弟の顔面がみるみるうちに元に戻っていく。……すごい。聖女の治癒能力でも、ここまではできないわ。まさにエリスが言った通り、『奇跡の復活薬』ね。
これには兄の方も驚いたようだったが、彼は地面に唾を吐き、同じように、下卑た言葉をベラベラと吐き捨てる。
「すげえ薬だな。でもよぉ、そんなクズをよみがえらせて、なんか意味あんのかよ? 馬鹿じゃねぇのか? そいつは、お前にとっても、不愉快な野郎だったんだろ? 苦しんで死ぬように、顔面を潰してやったんだから、放っておきゃよかったのによ」
エリスは何とか一命をとりとめた弟を優しく地面に横たえると、立ち上がり、鋭い目で兄を睨んだ。
「この人は、あなたの弟でしょう? 何故、命を奪おうとしたんですか?」
何がそんなにおかしいのか、兄はケラケラと笑いながら、答える。
「俺はなぁ、そいつがずっと嫌いだったんだよ、ガキの頃からな。でかい図体くらいしか取り柄のねぇ、能無しの役立たずだ。善人でもねぇくせに、悪人にもなりきれねぇ、中途半端野郎。だから、俺がいつも尻ぬぐいをさせられる。いい加減、うんざりしてたんだよ」
「…………」
「てめぇ……今更何言ってやがる。てめぇがそんなんだと、兄貴の俺まで舐められちまうだろうがぁ!」
兄は、狂気の笑みを弟に向け、それと同時に、弟の顔面に拳を叩き込んだ。
その、たった一撃で、弟の顔面は、鼻のあたりから陥没した。
潰れた鼻から、鮮血が飛び散る。弟は、悲鳴を上げることすらできず、溢れた血の中でおぼれるように、「ゴボゴボ」とくぐもった呻きを漏らしていた。
兄は弟の返り血を浴びながら、拳を振りかぶり、叫んだ。
「もうてめぇの問題じゃねぇんだよ、このアホが! 俺のメンツの問題なんだよ! そんなこともわからねぇのか! 低能のクソボケがぁ!」
そう言って、陥没した弟の顔面に、さらに拳を叩き込もうとする兄。
だが、それは未遂に終わった。
エリスが弟を助けようとするみたいに、兄に飛びかかったからだ。
兄はエリスの動きを敏感に察知し、弟を放り捨て、距離を取った。
そして、どこか自慢げに、上ずった声で言う。
「おい、クソエルフ。そう何度も不意打ちが決まると思ってんのか? あめぇんだよ、アホが」
この男、段々と言動が汚くなってきた。先程までの、飄々とした物言いは上辺だけのものであり、こっちが素なのだろう。そんな、本性を見せた男に対し、エリスはなおも変わらず、落ち着いた様子で言葉を返す。
「今のは、不意打ちをしたんじゃありません。あなたの攻撃をやめさせ、この人を助けるために飛びかかったんです」
エリスは、自らの衣服が血で汚れるのも気にせず、もはや瀕死の状態で痙攣を続けている弟を抱き起こすと、懐から『エルフの秘薬』を取り出し、一滴、飲ませてあげた。
すると、七色の輝きと共に、陥没した弟の顔面がみるみるうちに元に戻っていく。……すごい。聖女の治癒能力でも、ここまではできないわ。まさにエリスが言った通り、『奇跡の復活薬』ね。
これには兄の方も驚いたようだったが、彼は地面に唾を吐き、同じように、下卑た言葉をベラベラと吐き捨てる。
「すげえ薬だな。でもよぉ、そんなクズをよみがえらせて、なんか意味あんのかよ? 馬鹿じゃねぇのか? そいつは、お前にとっても、不愉快な野郎だったんだろ? 苦しんで死ぬように、顔面を潰してやったんだから、放っておきゃよかったのによ」
エリスは何とか一命をとりとめた弟を優しく地面に横たえると、立ち上がり、鋭い目で兄を睨んだ。
「この人は、あなたの弟でしょう? 何故、命を奪おうとしたんですか?」
何がそんなにおかしいのか、兄はケラケラと笑いながら、答える。
「俺はなぁ、そいつがずっと嫌いだったんだよ、ガキの頃からな。でかい図体くらいしか取り柄のねぇ、能無しの役立たずだ。善人でもねぇくせに、悪人にもなりきれねぇ、中途半端野郎。だから、俺がいつも尻ぬぐいをさせられる。いい加減、うんざりしてたんだよ」
「…………」
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