二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第47話

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 そして、ファイティングポーズを取るエリス。彼女の実力なら、チンピラごときが何十人いようと、一分もあれば全滅させられるだろう。だが……

「待って、それは駄目よ」

 私は、エリスを制止した。
 エリスは、不思議そうに首をかしげる。

「どうしてですか?」

「この人たち、根っからの悪党じゃないわ。半分以上は、あの用心棒の兄弟が怖くて、ヤケクソで突っ込んできてるだけだし、リーダー格の男も、本心ではこんなことしたくないって思ってる。あなたも聞いたでしょ? 彼の『すまねぇな、許してくれ』って、本当に申し訳なさそうな声を」

「は、はい。確かに、戦いは、あの人の本意ではなさそうでした」

「それに、この程度の連中をあなたが殴ったら、たとえ手加減したとしても、何人かは確実に死ぬわ。私はあなたに人殺しなんてさせたくないし、あなたもなるべくなら、人を殺したくなんてないでしょ?」

「それはまあ、そうですけど……じゃあ、このまま、彼らのなすがままになるんですか?」

「もちろん、そんなつもりはないわ。さっき言ったでしょ? 『武は降りかかる火の粉を払うためにある』って。まあ、見てなさい。私が、誰も怪我させずに、この場を収めてあげる」

 そして、いよいよ眼前にまでチンピラたちの雪崩が迫ったとき。
 私は瞳を閉じて両手を組み、『聖女の結界』を広域に展開した。

 結界は私を中心にドーム状に広がり、一瞬でチンピラたちを包み込んだ。

 それから私は、『聖女の結界』内の魔力濃度を上げる。
 するとチンピラたちは全員、悲鳴すら上げずに、意識を失った。

 40人の男たちが、一斉に倒れ伏す瞬間を目撃したエリスは、まるで、生まれて初めて手品を見た子供のような顔で、私に縋り付いた。

「お、お師匠様、これはいったい……?」

 私は結界を解除しながら、「ふぅ」と息を吐いて、答える。

「『聖女の結界』の力で、チンピラさんたちの意識を奪ったのよ。昨日は、あなたの『魔拳』みたいに、拳に結界の力を宿して戦ったけど、あっちが応用で、どっちかって言うと、今見せたような使い方が、結界本来の使い方に近いわね」

『聖女の結界』は、本来なら、国全体を包み込むほどの巨大なドーム状の聖域であり、そのドームに侵入しようとする低級の魔物を退けるための力である。

 私が今見せたのは、その『本来の使い方』を少し応用したもので、ドームの中にわざと敵を誘い込み、ドーム内の魔力濃度を上昇させることで、戦闘に対する心構えができていないような、未熟な戦士の意識を奪うことができるのである。……実戦で使うのは、相当に久しぶりだったが、なんとか上手くいってよかった。
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