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第44話
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「ふうん。ちなみに、この小瓶ひとつを満たす量を作るのに、どれくらい時間がかかるの?」
「えっと……たぶん、最短で二百年はかかると思います」
「にひゃっ!?」
二百年!?
と叫ぼうとしたのだが、驚きのあまり声がつまって、猫みたいな声を出してしまった。……うーむ、今現在、私の手の内に収まっているほんの少しの量を作るのに、二百年もかかる秘薬かぁ……なんだか、気の遠くなるような話だ。長命のエルフ族にとっても、二百年という期間は、決して短い時間ではないだろう。
その時である。
私の手の中で転がっていた小瓶が、少しだけ勢い余って、手から滑り落ちた。
「ぎゃああああああああぁっ!?」
私は心臓が止まらんばかりに驚き、悲鳴に近い声を漏らすと、落ちた小瓶を超スピードでスライディングキャッチする。……よ、良かった。キャッチ成功。エルフ族二百年の苦労の結晶を、間抜けなミスで、地面に吸わせてしまうところだった。
地面に倒れたままホッと息を吐く私に、エリスは微笑みかける。
「お師匠様、大丈夫ですよ。その小瓶は特殊な素材でできていますから、凄く頑丈なんです。地面に落ちた程度では、絶対に割れませんよ」
「そ、そういうことは、先に言ってちょうだい……い、いや、まあ、そもそもが、小瓶を転がすような、不安定な形で持ってた私が悪いんだけどね……」
私は苦笑し、エリスと微笑み合った。
そんな朗らかな空気が、一気に張り詰める。
何故かと言うと、私も、エリスも、明らかな敵意と殺気を感知したからだ。
私は素早く立ち上がり、『エルフの秘薬』をエリスに返すと、周囲を見渡す。……わぁ、いるわいるわ。ガラの悪そうなのが、あちらこちらにうじゃうじゃと。
もう少しで町の出口というところで、いかにもチンピラ的な人相の悪い男たちが、どこからともなくぞろぞろと出てくると、私とエリスを遠巻きに取り囲んだ。
「おい、本当に来たぞ。兄貴の言ってた通りだ」
「兄貴に舐めた真似したエルフの女って、こいつだよな」
「隣の女は誰だ? エルフの仲間か?」
「俺が知るわけねぇだろ」
「もし仲間だとしたら、逃がすわけにはいかねぇよな?」
「そうだな。二人ともやっちまった方がいいかもな」
彼らは口々にそんなことを言い合いながら、つい先程感じた通りの、敵意を含んだ視線を投げかけてくる。
ざっと見ただけで、30人……いや、40人はいるわね。いかにチンピラとはいえ、これだけ集まると壮観だわ。気の弱い人間なら、悪漢に囲まれたというこの状況だけで、泣き出してしまうだろう。いや、気の強い人間だって、敵意を持った40人に囲まれたら、普通は震えあがってしまうものだ。
「えっと……たぶん、最短で二百年はかかると思います」
「にひゃっ!?」
二百年!?
と叫ぼうとしたのだが、驚きのあまり声がつまって、猫みたいな声を出してしまった。……うーむ、今現在、私の手の内に収まっているほんの少しの量を作るのに、二百年もかかる秘薬かぁ……なんだか、気の遠くなるような話だ。長命のエルフ族にとっても、二百年という期間は、決して短い時間ではないだろう。
その時である。
私の手の中で転がっていた小瓶が、少しだけ勢い余って、手から滑り落ちた。
「ぎゃああああああああぁっ!?」
私は心臓が止まらんばかりに驚き、悲鳴に近い声を漏らすと、落ちた小瓶を超スピードでスライディングキャッチする。……よ、良かった。キャッチ成功。エルフ族二百年の苦労の結晶を、間抜けなミスで、地面に吸わせてしまうところだった。
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「お師匠様、大丈夫ですよ。その小瓶は特殊な素材でできていますから、凄く頑丈なんです。地面に落ちた程度では、絶対に割れませんよ」
「そ、そういうことは、先に言ってちょうだい……い、いや、まあ、そもそもが、小瓶を転がすような、不安定な形で持ってた私が悪いんだけどね……」
私は苦笑し、エリスと微笑み合った。
そんな朗らかな空気が、一気に張り詰める。
何故かと言うと、私も、エリスも、明らかな敵意と殺気を感知したからだ。
私は素早く立ち上がり、『エルフの秘薬』をエリスに返すと、周囲を見渡す。……わぁ、いるわいるわ。ガラの悪そうなのが、あちらこちらにうじゃうじゃと。
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