二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第37話

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 そして私は、宿の自室に戻った。

 暗い室内に明かりをともすと、後ろにいるエリスに声をかける。

「……あの、なんで宿までついてくるわけ?」

 そう。いま述べた通り、エリスは私のそばにぴったり寄り添い、ここまでついて来てしまったのだ。

 いや、まあ、エルフィン・ジェイダイトは貰っちゃったし、一応この子は私の弟子ってことになるわけだから、邪険にするつもりはないが、それでも今日は色々あって疲れた。だから、一人でさっさとお風呂に入って、もう寝てしまいたいんだけど……

 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、エリスは太陽のように眩しい笑顔で答える。

「はい! 私はもう、お師匠様の弟子です! 弟子というものは、師の身の回りの世話をするのがエルフ界の常識! なので、今晩から早速、お師匠様のお役に立ちたいと思いまして、お供させていただきました! どうか、なんでも言いつけてください!」

「あ、そう……それじゃ私、一人になりたいから、部屋から出て行ってくれない……?」

「拒否します!」

「えぇ~……『なんでも言いつけてください』って言ったじゃない……」

「私を追い出す系の命令はナシでお願いします! 悲しいので!」

「わ、わかったわよ……じゃあとりあえず、大声でお返事するのだけはやめてね。もう遅いし、ご近所迷惑だから」

「はぁい……以後気をつけますぅ……」

 エリスは、やっと静かになった。一応、『追い出す系の命令』以外は素直に聞いてくれるみたいなので、ホッと一安心である。

 さあて、お風呂お風呂。一日最後のお楽しみ、至福のバスタイムの時間よ。私はエリスに「適当にくつろいでて」と言い、軽やかな足取りでバスルームに向かった。

 この宿は、全体の作りが安っぽく、かなりリーズナブルなお宿ではあるのだが、素晴らしいことに、各部屋ごとに、小さいながらも備え付けのお風呂が設置されている(そこに惹かれて、ここを定宿に選んだのよね)。

 脱衣場で手早く服を脱ぎ、熱いシャワーを浴びると、汗と共に、一日の疲れが流れ落ちていくようだ。……あ~、これよ、これこれ、この至福の時間……大好き……これから髪と体を洗って、ゆったりと湯船でリラックスを……

 その時、背後でガチャリと音がした。

 もの凄く嫌な予感がして振り返ると、素っ裸のエリスが、好奇心旺盛な瞳で、バスルームを見回していた。そのはしゃいだ様子は、初めて遊園地に来た子供のようである。

「わぁ~、凄いですね~。こんなにちゃんとした給湯設備があるなんて、やっぱり、人間の宿は進んでます~」

 私はシャワーを止め、静かながらも重たい声で、言い放つ。

「なんで入って来た。言え」

 エリスは片膝をつき、恭しく頭を下げながら、答えた。

「はっ。僭越ながら、お師匠様のお背中を流させていただこうと思いまして……」

「そう。必要ないから、出てって」

「拒否し……」

「『拒否します』って言ったらぶん殴るわよ」

「そんなぁ~」
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