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第19話(ラジアス視点)
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『やっと向いてない仕事から解放された』と言う感じで、喜び勇んで走り去っていくヒーラーの背中を見送りながら、俺は一人、ため息を漏らした。
さて、これからどうする。
魔王討伐の旅を、やめるわけにはいかない。
俺の双肩には、国王陛下と、大衆の期待がかかっているのだ。
絶対に、やめるわけにはいかない。
しかし、たった一人で旅を続けることは、不可能だ。いかに勇者でも、単独では何もなしえない。やはり、強力な仲間の存在が必要になる。
だが、困った。
トレイボンほどの天才魔導師は、そう簡単には見つからないだろうし、たった今走り去っていたヒーラーと同じレベルで治癒魔法が使える人間がゴロゴロいるとは考えづらい。何より、ヒーラーはもうたくさんだ。あの仕事についている人間は、基本的に、戦闘には向いていない。
だいたい、トレイボン並みの魔導師と、優秀な回復役を集めることができても、ちょっと前の状況に戻るだけで、それでは結局、満足にパーティーを機能させることはできない。なので、堅牢な防御力を持つ『盾役』も探さなければ。
……しかし、これもなかなか難しい。
地味な上に過酷な『盾役』を務めたがる戦士は、ほとんどいないからだ。
もちろん、職にあぶれている、凡庸な『盾役』ならすぐに見つかると思うが、そんな奴を仲間にしても仕方がない。凡庸な能力では、魔王軍の将軍クラスの攻撃を受けたら、一撃で倒されてしまうからな。……俺とて勇者だ。能力の足りない者を使い捨ての盾代わりにして、無意味に犠牲者を増やすつもりはない。
くそっ。
仲間集めとは、思った以上に厄介だな。
優秀な人材は貴重だし、たとえ優秀な人材を集めることができたとしても、バランスが悪ければ、結局のところ、良いパーティーにはなりえない。聖女ディーナのように、攻撃、防御、治癒を、一人でこなせるような人材がいれば、話は別なのだが……
……ん?
そうか。
聖女ディーナだ。
よく考えたら、あいつは死んだわけでも、怪我でリタイアしたわけでもない。あいつをまた、呼び戻せばいいんだ。パーティーを抜けてから、まだ半月もたっていないのだから、そこまで遠方に行ってしまったということもあるまい。
ハッキリ言ってあいつとは馬が合わないし、一度追い出した相手をまたパーティーに誘うのは少々癪だが、まあ、贅沢は言っていられない。ディーナがいれば、二人でも旅は続けられるし、それからまた、ゆっくり時間をかけて、有能なメンバーを集めていけばいいさ。
思い立ったが吉日。
俺は、その日のうちにシーフギルドに依頼して、ディーナの所在を探させた。
チンピラのようなシーフ連中の手を借りるのは不本意だったが、奴らの調査能力と情報網は確かだ。シーフ達なら、俺一人で探すよりも、遥かに短時間でディーナの居場所を見つけるだろう。
そして、二日後。
ディーナがどこにいるか、分かった。
ディーナは意外にも、パーティーを追放したときに滞在していた町から、動いていなかった。故郷に帰ろうなどとは、思わなかったらしい。
ああ、そうか。ディーナの故郷は確か、かなりの遠方だったな。口で『故郷に帰る』と言うのは簡単だが、実際には、大量の路銀が必要だ。あいつ、そんなに金を持っていないだろうし、これからどうしていいか分からないのかもな。
恐らく、安い宿にでも泊まって、困窮した日々を過ごしているに違いない。これなら、俺が出向いて『再びパーティーに戻ってくれ』と頼めば、喜んで再加入することだろう。
よし、善は急げだ。
早速ディーナのいる町に、出発するとしよう。
――――――――――――――――――――――――――――――――
次回からは、再びディーナの視点で物語が進んでいきます。
さて、これからどうする。
魔王討伐の旅を、やめるわけにはいかない。
俺の双肩には、国王陛下と、大衆の期待がかかっているのだ。
絶対に、やめるわけにはいかない。
しかし、たった一人で旅を続けることは、不可能だ。いかに勇者でも、単独では何もなしえない。やはり、強力な仲間の存在が必要になる。
だが、困った。
トレイボンほどの天才魔導師は、そう簡単には見つからないだろうし、たった今走り去っていたヒーラーと同じレベルで治癒魔法が使える人間がゴロゴロいるとは考えづらい。何より、ヒーラーはもうたくさんだ。あの仕事についている人間は、基本的に、戦闘には向いていない。
だいたい、トレイボン並みの魔導師と、優秀な回復役を集めることができても、ちょっと前の状況に戻るだけで、それでは結局、満足にパーティーを機能させることはできない。なので、堅牢な防御力を持つ『盾役』も探さなければ。
……しかし、これもなかなか難しい。
地味な上に過酷な『盾役』を務めたがる戦士は、ほとんどいないからだ。
もちろん、職にあぶれている、凡庸な『盾役』ならすぐに見つかると思うが、そんな奴を仲間にしても仕方がない。凡庸な能力では、魔王軍の将軍クラスの攻撃を受けたら、一撃で倒されてしまうからな。……俺とて勇者だ。能力の足りない者を使い捨ての盾代わりにして、無意味に犠牲者を増やすつもりはない。
くそっ。
仲間集めとは、思った以上に厄介だな。
優秀な人材は貴重だし、たとえ優秀な人材を集めることができたとしても、バランスが悪ければ、結局のところ、良いパーティーにはなりえない。聖女ディーナのように、攻撃、防御、治癒を、一人でこなせるような人材がいれば、話は別なのだが……
……ん?
そうか。
聖女ディーナだ。
よく考えたら、あいつは死んだわけでも、怪我でリタイアしたわけでもない。あいつをまた、呼び戻せばいいんだ。パーティーを抜けてから、まだ半月もたっていないのだから、そこまで遠方に行ってしまったということもあるまい。
ハッキリ言ってあいつとは馬が合わないし、一度追い出した相手をまたパーティーに誘うのは少々癪だが、まあ、贅沢は言っていられない。ディーナがいれば、二人でも旅は続けられるし、それからまた、ゆっくり時間をかけて、有能なメンバーを集めていけばいいさ。
思い立ったが吉日。
俺は、その日のうちにシーフギルドに依頼して、ディーナの所在を探させた。
チンピラのようなシーフ連中の手を借りるのは不本意だったが、奴らの調査能力と情報網は確かだ。シーフ達なら、俺一人で探すよりも、遥かに短時間でディーナの居場所を見つけるだろう。
そして、二日後。
ディーナがどこにいるか、分かった。
ディーナは意外にも、パーティーを追放したときに滞在していた町から、動いていなかった。故郷に帰ろうなどとは、思わなかったらしい。
ああ、そうか。ディーナの故郷は確か、かなりの遠方だったな。口で『故郷に帰る』と言うのは簡単だが、実際には、大量の路銀が必要だ。あいつ、そんなに金を持っていないだろうし、これからどうしていいか分からないのかもな。
恐らく、安い宿にでも泊まって、困窮した日々を過ごしているに違いない。これなら、俺が出向いて『再びパーティーに戻ってくれ』と頼めば、喜んで再加入することだろう。
よし、善は急げだ。
早速ディーナのいる町に、出発するとしよう。
――――――――――――――――――――――――――――――――
次回からは、再びディーナの視点で物語が進んでいきます。
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