二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第1話

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「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」

 私たちのリーダーである勇者ラジアスに突然そう言われ、私は「あ~……やっぱりね~……」と、呆けた声を出した。

 驚きは、あまりなかった。

 最近、ラジアスの私に対する態度が、日に日に辛辣さを増していたから、そろそろこんな日が来るかもしれないと予想していたのだ。

 私たちは、魔王討伐のために結成された、いわゆる『勇者パーティー』である。剣の達人である勇者ラジアスを筆頭に、あらゆる攻撃魔法を極めた大魔導師トレイボンと、回復魔法、防御魔法、なんでもござれの聖女ディーナ――つまり私の、三人パーティーだ。

 えっ?

 勇者パーティって、普通は四人組じゃないかって?

 その通り。
 もともとは、勇者、魔導師、僧侶、戦士の、四人パーティーだったのよ。

 でも、僧侶のおじいちゃんが、そろそろ年齢的に旅がきつくなってきたって理由で、引退してね。代わりの回復役が必要ってことで、急遽私が、新しいメンバーに抜擢されたの。聖女は僧侶以上の回復魔法が使えるから、適任だったわけね。

 それで、半年ほど旅をした後。

 今度は、戦士が大怪我をして、とても冒険を続けられる状態じゃなくなった。欠員補充をしたくても、勇者パーティーの一角を担えるような優秀な戦士は、そうそういない。で、仕方ないから、私が戦士の代わりも務めることになったの。

 そこのあなた。
『聖女が戦士の代わりなんてできるわけねーだろ』と思ったでしょう?

 それが、できちゃうんです。

 私、子供の頃から、聖女としての修行を続けるのと同時に、武術の英才教育も受けていたのよ。ほら、『モンク僧』っているでしょ? あんな感じで、精神を鍛えるための一環として、かなり過酷な鍛錬をさせられてたってわけ。

 自慢するわけじゃないんだけど、私、こう見えても天才肌でね。三年前――18歳の頃には、聖女拳法の免許皆伝を受けてるから、少なくとも、世間に溢れてる戦士や武術家よりは、まあ、相当強いのよ。

 でも、結果的にそれが、私自身の首を絞めることになった。

 私が、僧侶と戦士、二人分の役目をこなし、活躍することで、世間の注目は私に集中するようになり、目立ちたがりの勇者ラジアスと魔導師トレイボンは、それが不愉快でたまらなかったらしい。

 正直言って、ラジアスとトレイボンとは、もともとイマイチ馬が合わなかったのだが、最近は、私に対して露骨に敵対的な態度を見せるようになっていたので、私としても、『もう、一緒にやってくのは無理っぽいかな』と思っていた。

 だから私は、『パーティーを抜けろ』と言うラジアスの言葉を、素直に受け入れることにした。……こっちだって、それなりにしんどい思いをして、二人分働いていた(しかも一人分の給料で)のだ。私の方から頭を下げてまでパーティーに留まる理由はない。
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