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第131話
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それは、意外な反応だった。『はぁ?』という短い言葉ではあるが、これまで平静を保ち、常に余裕を見せていたフェルヴァが、私の指摘を受け、明らかに感情を乱したのだ。
私は、さらに畳みかけてみることにした。
「知ってる? 相手を罵倒したり、見下したりするときに出る言葉って、実は、『言ってる本人が一番言われたくないこと』なんだって。容貌にコンプレックスがある人ほど、他人の醜い部分を嗤い、間違いだらけの人生を送っている人ほど、他者の些細な間違いを指摘する……って感じでね」
フェルヴァは、黙って私の話を聞いていた。
顔は、先程までのはしゃぎっぷりが嘘のような無表情だ。
表情を消すことで、感情の乱れを隠そうとしているように、私には見えた。
私は静かに語り続ける。
「きっと、一生懸命に他人を攻撃することで、『自分はそうじゃない』って思い込みたいのね。他人を見下しているうちは、なんとなく優位に立った気がして、少なくとも、自分は見下される立場ではないって思えるから。でも、それって結局は幻想で、他人を見下したからといって、自分の立場が上がるわけじゃないと思うけどね」
「…………」
「あなたのさっきからの言動、私やリーゼルに聞かせようとしてるっていうより、まるで自分に言い聞かせてるみたいだったわ。『このかわいそうな女の子たちを踏みつけ、支配している自分は、かわいそうな女の子なんかじゃない』って思い込もうとしてるみたいに。あなたも昔、誰かに、酷い目に遭わされたの? だからそんな……」
私の言葉はまだ途中だったが、フェルヴァは鋭い声で遮った。
「やめて」
しかし私は、やめなかった。
「推察してみましょうか。あなた、さっきのスピーチで、多種多様な嘲りの言葉を発してたわね。語彙が豊富で、頭のいい子だと思ったわ。だけど、その中でも、『ゴミ』『どうしようもない』『かわいそう』って言葉だけは、二回でてきたのよ。この三つの言葉の中に、あなたの心理が隠されていると、私は思うのよね」
「やめて」
「恐らくあなたは、一時期、自分のことを『ゴミ』のようだと感じていた。あるいは、あなた自身が『ゴミ』のように嫌悪する相手のせいで、『どうしようもない』状態に陥っていたんじゃないかしら。そしてそんな自分を、この世の誰よりも『かわいそう』だと思い、憐れんでいた。それ故にあなたは……」
「やめろって言ってるのよ! 黙れ!」
私は、さらに畳みかけてみることにした。
「知ってる? 相手を罵倒したり、見下したりするときに出る言葉って、実は、『言ってる本人が一番言われたくないこと』なんだって。容貌にコンプレックスがある人ほど、他人の醜い部分を嗤い、間違いだらけの人生を送っている人ほど、他者の些細な間違いを指摘する……って感じでね」
フェルヴァは、黙って私の話を聞いていた。
顔は、先程までのはしゃぎっぷりが嘘のような無表情だ。
表情を消すことで、感情の乱れを隠そうとしているように、私には見えた。
私は静かに語り続ける。
「きっと、一生懸命に他人を攻撃することで、『自分はそうじゃない』って思い込みたいのね。他人を見下しているうちは、なんとなく優位に立った気がして、少なくとも、自分は見下される立場ではないって思えるから。でも、それって結局は幻想で、他人を見下したからといって、自分の立場が上がるわけじゃないと思うけどね」
「…………」
「あなたのさっきからの言動、私やリーゼルに聞かせようとしてるっていうより、まるで自分に言い聞かせてるみたいだったわ。『このかわいそうな女の子たちを踏みつけ、支配している自分は、かわいそうな女の子なんかじゃない』って思い込もうとしてるみたいに。あなたも昔、誰かに、酷い目に遭わされたの? だからそんな……」
私の言葉はまだ途中だったが、フェルヴァは鋭い声で遮った。
「やめて」
しかし私は、やめなかった。
「推察してみましょうか。あなた、さっきのスピーチで、多種多様な嘲りの言葉を発してたわね。語彙が豊富で、頭のいい子だと思ったわ。だけど、その中でも、『ゴミ』『どうしようもない』『かわいそう』って言葉だけは、二回でてきたのよ。この三つの言葉の中に、あなたの心理が隠されていると、私は思うのよね」
「やめて」
「恐らくあなたは、一時期、自分のことを『ゴミ』のようだと感じていた。あるいは、あなた自身が『ゴミ』のように嫌悪する相手のせいで、『どうしようもない』状態に陥っていたんじゃないかしら。そしてそんな自分を、この世の誰よりも『かわいそう』だと思い、憐れんでいた。それ故にあなたは……」
「やめろって言ってるのよ! 黙れ!」
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