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第124話

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 月が、まぶしい。
 今宵は満月だ。

 まるで、『夜の太陽』とでも呼べそうな明るさの、大きな月。その月の光が、ボロボロの屋根に空いた穴を貫くようにして、礼拝堂に注いでいる。

 光は、対峙する二人の姉妹――リーゼルとフェルヴァを、包み込んでいるようだ。

 神秘的で、美しい光景であった。

 リーゼルと向かい合ったフェルヴァは、相変わらず私の方をちらりと見ることすらなく、リーゼルの顔だけを真っすぐ見て、楽しげに言葉を紡いでいく。

「それにしても、さすがは姉さんね。交渉も戦闘もほとんどせず、地道なスリ活動だけで、プラチナカードを5枚集めちゃうなんて」

 リーゼルは、褒められても別に嬉しそうではなく、硬い顔で言葉を返す。

「半年の期限、ギリギリだったけどな。さあ、約束だ。『至高なる魔女の会』は、解散してもらうぞ」

「はいはい、わかってますよ。前にも言ったけど、私、約束を破る人って嫌いだから、自分がした約束は、ちゃんと守るわ」

 フェルヴァはそう言うと、何かの呪文を唱えた。
 すると、彼女の目の前に、純白の便箋が現れる。

 いつの間にか、フェルヴァは右手に万年筆を握っており、滑らかな動きで、宙に浮いたままの便箋に、すらすらと文字を書き込んでいった。

「拝啓、親愛なる『至高なる魔女の会』の皆さんへ。魔女ごっこも飽きたので、『至高なる魔女の会』は、本日をもって解散いたします。皆さんも、『魔法使い優生思想』なんて程度の低い選民思想は忘れて、どうぞ、一般社会の中で、普通に生きていってください。それではさようなら。フェルヴァ・アストラスより」

 フェルヴァは、自分の書き込んでいる内容を自分で朗読し、最後にそれを、リーゼルに直接見せてから、小首をかしげて言う。

「文面は、こんなもんでどう? この手紙を複製して、『至高なる魔女の会』の全員へ送達するわ。これで、『至高なる魔女の会』はおしまい。めでたしめでたしってわけね」

「それだけ? こんな手紙ひとつで、『至高なる魔女の会』の全員が納得して、会を解散するとは、俺にはとても思えないが……」

「解散するわよ。絶対にそうなる。納得するかは別にして、解散するしかないのよ。だってこの私が『解散する』って言ってるんだから、あいつらはそれを受け入れるしかないの」

「…………」
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