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第121話(リーゼル視点)
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だが確かに、フェルヴァは幼いころから、たとえ口約束でも、一度たりとも破ったことはなかった。もちろん、俺の記憶の中にある幼いフェルヴァと、今目の前にいる怪物はまったくの別人なので、今のフェルヴァが約束を守る保証など、実際にはないのと同じである。
……しかし、フェルヴァと『ゲーム』をする以外に、多くの人命を救う手段がないこともまた事実だった。だから俺は、フェルヴァの話に乗ることに決めたんだ。
俺がその気になったことで、フェルヴァは満足げにゲームのルールを語り始めた。
「ルールはいたって簡単。姉さんにはまず、『至高なる魔女の会』を辞めてもらいます。そして、これから半年のうちに、姉さんが『至高なる魔女の会』の幹部たちからプラチナカードを5枚集め、特別集会である『魔女のお茶会』に出席することができたら、姉さんの勝ち。それができずに、半年たってしまったら、私の勝ち」
「なんだ、随分簡単なゲームだな。リリエンヌやブレンダ相手ならともかく、他の幹部たちからなら、プラチナカードを集めるのなんて楽勝だ。手当たり次第に戦いを挑めば、半年どころか、一週間もあれば5枚は集まるぜ」
「そうね。だから、戦ってプラチナカードを奪うのはルール違反にするわ」
「ちっ。まあ、そりゃそうだよな」
「うふふ、スリでもやって地道に盗んでちょうだい。皆、大切なプラチナカードを盗まれないように気をつけてるから、大変だと思うけどね」
「スリか……人の物をコソコソと盗むなんて、俺の一番嫌いなことだ。お前、わざわざ俺が嫌がることをさせたくて、このゲームを思いついたんだろ?」
「ふふ、さあ、どうかしら。盗むのが嫌なら、交渉して手に入れてもいいのよ?」
「何が交渉だ。幹部たちにとって、プラチナカードは命よりも大事な物だ。たとえ大金を積まれたって、絶対に渡しゃしないって分かってるくせに。……ところでよ、スリをやって、それがバレて、向こうから戦いを仕掛けてきた場合は、どうすりゃいいんだ? 黙って殺されなきゃ駄目なのか?」
「うーん、なるほど。そういうこともあるわよね。……そうね、そういう場合は、自衛のために戦うことを許可するわ。でも、どうしようもない状況になったときだけよ。明らかにわざとスリを失敗し、戦いを誘発していると私が判断したときは、ペナルティを与えます」
……しかし、フェルヴァと『ゲーム』をする以外に、多くの人命を救う手段がないこともまた事実だった。だから俺は、フェルヴァの話に乗ることに決めたんだ。
俺がその気になったことで、フェルヴァは満足げにゲームのルールを語り始めた。
「ルールはいたって簡単。姉さんにはまず、『至高なる魔女の会』を辞めてもらいます。そして、これから半年のうちに、姉さんが『至高なる魔女の会』の幹部たちからプラチナカードを5枚集め、特別集会である『魔女のお茶会』に出席することができたら、姉さんの勝ち。それができずに、半年たってしまったら、私の勝ち」
「なんだ、随分簡単なゲームだな。リリエンヌやブレンダ相手ならともかく、他の幹部たちからなら、プラチナカードを集めるのなんて楽勝だ。手当たり次第に戦いを挑めば、半年どころか、一週間もあれば5枚は集まるぜ」
「そうね。だから、戦ってプラチナカードを奪うのはルール違反にするわ」
「ちっ。まあ、そりゃそうだよな」
「うふふ、スリでもやって地道に盗んでちょうだい。皆、大切なプラチナカードを盗まれないように気をつけてるから、大変だと思うけどね」
「スリか……人の物をコソコソと盗むなんて、俺の一番嫌いなことだ。お前、わざわざ俺が嫌がることをさせたくて、このゲームを思いついたんだろ?」
「ふふ、さあ、どうかしら。盗むのが嫌なら、交渉して手に入れてもいいのよ?」
「何が交渉だ。幹部たちにとって、プラチナカードは命よりも大事な物だ。たとえ大金を積まれたって、絶対に渡しゃしないって分かってるくせに。……ところでよ、スリをやって、それがバレて、向こうから戦いを仕掛けてきた場合は、どうすりゃいいんだ? 黙って殺されなきゃ駄目なのか?」
「うーん、なるほど。そういうこともあるわよね。……そうね、そういう場合は、自衛のために戦うことを許可するわ。でも、どうしようもない状況になったときだけよ。明らかにわざとスリを失敗し、戦いを誘発していると私が判断したときは、ペナルティを与えます」
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