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第119話(リーゼル視点)

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「なんだと……」

「私の最終目的は人類の絶滅だけど、とりあえずはこの国の人間全員を殺すだけでも、それなりに満足よ。その後は、どこか遠くの国に潜伏し、そこでまた人造魔導師を少しずつ増やして、最終戦争を起こすチャンスをゆっくり待つわ。……うふふ、それこそ、10年でも、20年でもね。姉さんも知ってるでしょ? 私、待つのは得意なの」

 俺は、唇をかみしめた。

 フェルヴァの楽しげな口調から察するに、こいつは苦しまぎれの強がりを言ってるわけではなく、『本当にそれでも構わない』と思っていることが、よく分かったからだ。……もしも俺が、今すぐ警察に駆け込むような真似をした場合、フェルヴァは『至高なる魔女の会』を率いて戦争を始め、この平和な国は一瞬で地獄に変わることだろう。

 どうする。

 告発すれば、少なくともこの国の人間は全員死ぬことになる。

 かといって、腕ずくでフェルヴァを止めるのも不可能だ。

 ハッキリ言って今のフェルヴァは、精神的にも、魔法能力的にも、正真正銘の怪物だ。俺の知る、幼い頃のフェルヴァとは、完全に別人である。たとえ俺が命を燃やして戦ったとしても、赤ん坊の手をひねるように倒されてしまうだろう。

 まさしく、万事休すだ。

 俺には、どうすることもできないのか?
 何か、奇跡のような解決策はないのか?
 誰も死なずに、フェルヴァの狂気を止める方法はないのか?

 ……そんなもの、あるはずがなかった。

 頭を抱えて苦悶する俺を見かねたように、フェルヴァは優しい声をかけてくる。

「悩んでるわね、姉さん。ふふ、そりゃそうよね。私を腕ずくで止めるのは無理だし、誰かに助けを求め、『至高なる魔女の会』の存在が明るみになれば、私は戦争を起こし、国中の人間が死んでしまう。ふふ、ふふふ、優しい姉さんは、誰も死なせたくないのね」

「…………」

「でも、こんなふうに姉さんと『ああでもないこうでもない』って、ゲームみたいな問答をするの、楽しいわ。……そうだ、姉さん、せっかくだからもっと本格的に、私とゲームをしてみない?」

「……ゲームをするような気分じゃない」

「あら残念。姉さんが勝ったら、戦争を起こしたりなんかしないで、『至高なる魔女の会』を解散しようと思ってたんだけど」
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