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第102話

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 そしてフェルヴァは、シャーリーを抱き起こし、まるで犬か猫でも愛でるように、シャーリーの頭や頬を撫で、限りなく優しく、そして、限りない慈愛を込めて、甘く囁いた。

「そんなに怖がらないで。あなたのこと、嫌いになったりなんかしないわ。大好きよ、私の可愛いシャーリー」

「はぅ……フェルヴァ様……フェルヴァ様ぁ……ふあああぁぁぁ……!」

 シャーリーは歓喜の叫びをあげながら、激しく痙攣し、失神した。

 異様な光景だった。

 私自身、先程はフェルヴァに対して軽い憧れのような感情を抱いたが、ブレンダとシャーリーの心酔っぷりは、ハッキリ言ってまともじゃない。

 フェルヴァは、幸せそうな顔で気を失っているブレンダとシャーリーを見回してから、リーゼルに向き直り、ケラケラと笑いながら言う。

「ほら見て、姉さん。このゴミどもの、蕩け切った幸せそうな顔。今日でこのくだらない魔女の集会ごっこもおしまいだから、最後に良い夢を見せてあげたのよ。私って、とっても優しいでしょう?」

「お前がそんな、こいつらを思いやるようなこと、するわけがない。いったい、何のつもりだ」

「さすが姉さん。私の性格、よく分かってるわね。ふふ、ふふふ……こいつらにはね、『私の存在』を色濃く刷り込んでやったの。私から与えられた『常軌を逸した快感』と『偽物の愛の言葉』で、こいつらの心を、ぐっちゃぐちゃに壊してやったのよ。あはっ、これでこいつらは、私以外の誰に触れられても、悦びなんて感じられない」

「…………」

「こいつらがいつか恋をして、好きな男と愛を交わしたとしても、少しも気持ちよくなんかないはずよ。感じるのは、おぞましさと、退屈さと、嫌悪感だけ。あははっ、それって、とっても悲しいわよね。せっかく愛する異性とベッドを共にして、感じるのが不快感だけなんて! なんだかすっごく間抜けで、笑えてこない? あはっ、あはっ、あははははは!」

 高笑いするフェルヴァを、リーゼルはしばらく無言で眺めていた。
 そして、悲しそうな声で、弱々しい言葉を発する。

「お前……なんでそんなふうになっちまったんだ……? 昔は、そんなんじゃなかっただろ……? 俺には今のお前が、狂ってるとしか思えない……」

 フェルヴァは、ぴたりと笑うのをやめた。
 そして、能面のような顔で、小さく囁く。

「そうよ。だって私、とっくの昔に壊れちゃってるんだもの」
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